*絵本を聞くこと 絵本を読むこと それは素敵なグリーフケア『わすれられないおくりもの』

2018年3月22日

 少子・核家族の時代だから、死という別れに関わる機会がどんどん少なくなってきている。
死の非日常化である。その変化は、日常生活の価値基準にも様々に影響を与えている。
「葬儀という悲しみの場に、子どもを立ち会わせるのはかわいそうだ。だから参列させない」
こんな声も聞こえてくる。
確かに葬儀の場は、人生経験を重ねた大人にとっても、つらい場である。
子どもなら、なおさらである。だから、先ほどの声も一理あると思っている。
そんな中でも、通夜・葬儀・法事に参ってくれた子ども達、
そして声をかけた親御さんには心からお礼が言いたい。

 今日の絵本は、私自身、15年ほどの長いつきあいだ。
何度読んでも、そのたびに気づきが生まれ、次第に深められていくから、
絵本の力とは素晴らしいものである。
アナグマを主人公として、たくさんの動物が出てくる大人気の絵本だ。
保育所の子どもからでも、絵だけで「かわいい!!」と単純に楽しめるけれど、
内容は、アナグマの死とそれに直面する動物たちの死の受容を取り上げた、大切な絵本である。
死を避けられない私たちだからこそ、この絵本は、本来、年代を選ばない。
そして、この絵本は、感性の豊かな方(=年代問わず)とこそ、ぜひ分かち合いたい絵本である。

 私は、この絵本にこんなことを気づかされた。

・主人公は、死をこわいと思っていないということ。
・そして、残していく友のことを案じているということ。
・大切な友を亡くすと、何ものにも覆い尽くせないほどの悲しみが襲ってくるということ。
・頭ではわかっていても、それを受け止めようとする感情は、しばしば一致しないということ。
・別れの悲しみは、しばらく続いていくということ。
・別れたあと、友と思い出話をすることがとても大切な時間であるということ。
・思い出話をすることで、在りし日をありありとふりかえることが出来るということ。
・別れ=亡くすだけでなく、亡き人が遺してくれた生活の知恵や工夫という贈り物を再発見出来るということ。
・別れ=悲しみだけでなく、「有り難う」という感謝の気持ちが生まれてくるということ。

この絵本は、動物たちを通して、私たち人間の生死とその受容のプロセスを丁寧に現している。
そして、これまで伝えられてきた通夜・葬儀・法事の大切さも、示しているように思えるのだ。

 なお、私は「絵本のお坊さん」であるが、中学生以上に絵本を聞いてもらうのは、実際難しいものがある。
それは、それぞれが持っている絵本に対する先入観が邪魔をするからだ。
だから、中学生~30代の若者には、時間を取って若者向けのご法話をすることにしている。

「少子・高齢の時代だから、今日参った皆さんの中には、このような場は初めてという人もいるでしょう。
この別れ=死をどのようにとらえ、受け止めたら良いのかと混乱している人もいるでしょう。
普段私たちは、健康第一を考えて生活をしています。
確かに、生まれた以上だれもが死んでいくという理屈は知っているけれど、
そのことが身内や自分に降りかかってくるとは、あまり考えていないのが現実です。
つまり、死の問題は、他人事なのです。
しかし、今日このような通夜・葬儀・法事に立ち会うことで、死は他人事ではないのだ。
ゆくゆく自分自身のことなのだと気づいてくださったことでしょう。(中略)
多くの方の生老病死に立ち会い、その場に集う家族・親族の話を聞くことが、
自分自身の生・老・病・死のリハーサルになるのです。
だから、今日の通夜の場を単に焼香して終わりではなく、
一緒に参列した家族・親族の思い出話や人生の悲喜交々をしっかりインタビューしてみてください。
そのインタビューしたことが、これからのあなたの人生の宝物としてきっとよみがえり、
あなたの人生を支えてくれるものとなります。今日は、ようこそお参りくださいました。」
(記:源光寺住職 福間玄猷)

▼グリーフケアとは:
死別を経験しますと、しらずしらずに亡くなった人を思い慕う気持ちを中心に湧き起こる感情・情緒に
心が占有されそうな自分に気づきます(喪失に関係するさまざま思い:「喪失」としてまとめます)。
また一方では死別という現実に対応して、この窮地をなんとかしようと努力を試みています
(現実に対応しようとする思い:「立ち直りの思い」としてまとめます)。
この共存する二つの間で揺れ動き、なんとも不安定な状態となります。
同時に身体上にも不愉快な反応・違和感を経験します。
これらを「グリーフ」と言います。
グリーフの時期には「自分とは何か」「死とは…」「死者とは…」など実存への問いかけをも行っています。
このような状態にある人に、さりげなく寄り添い、援助することを「グリーフケア」と言います。
           一般社団法人日本グリーフケア協会ホームページより

今日の絵本:
わすれられないおくりもの:S.バーレイ/さく 小川仁央/訳 評論社

投稿者について

福間 玄猷

1971年生まれ。本願寺派布教使・源光寺第14代住職 別名「絵本のお坊さん」 大阪府茨木市出身。平成8年三次市・源光寺へ入寺。《様々な経験を持った人々が集い、信頼できる温かなつながりを育む》そのような交流館を目指して、赤ちゃんからご年配の方まで世代を超えた活動を続けている。寺院や福祉施設はもちろん、各地の学校や保育所、コミュニティーセンター・いきいきサロンなどに招かれ、「いのち・こころ・真実を見つめる」ご法話や講演を重ねている。また、「子育て支援」「アドバンスケア・プランニング」「グリーフケア」を柱にした研修会も好評。子どもたちと富士山登山を3度完遂。グリーフケアアドバイザー1級/発達障害コミュニケーション初級指導者/つどい・さんあい 代表

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