お釈迦さまと私を知る『平山郁夫のお釈迦さまの生涯』

2018年4月9日

 ちょうど花まつり(日本では4月8日=お釈迦さまのお誕生をお祝いする仏教行事)
にちなんで、この絵本を紹介したい。

 皆さんは、お釈迦さまと聞いて、何を思い浮かべるであろうか。
大昔のインドの人で、修行をして仏教を開いた人
ということは、多くの人に知られているが、
元々はインドのある国の王子として生まれ、大変裕福な生活を送っていたこと。
ところが、お城の外へ散歩に出たとき、老・病・死といういのちの事実に初めて出会い、
大きな苦悩を抱えたことは、あまり知られていない。
(そもそも、お釈迦さまという人を知っている前提で書き始めたが、
30才までの世代で実際に知っている人はどれほどいるのだろうか。
調査をしてみたいとも思っている。)

 おおよそ2600年前のインドに生まれたお釈迦さま=ブッダ
と聞くと、直ちに自分との共通点が見つからないので、
どうしても縁遠い存在、遠い世界の人だと受け止めてしまう人が多い。
だから、なんでお釈迦さまのお誕生をお祝いする必要があるのか、
その教えを聞く必要があるのかという問いが、当然生まれてくる。
(何せ自分と関係ないのだから・・・。)

 しかし、お釈迦さまの人生を丁寧にたどると、
現代の私たちとも共通する様々な部分が見えてくる。
その最大なものは、
まだシッダルタととよばれていた頃のその人は、
自分は望んでもいないのに、なぜ老い・病いをかかえなければならないのか?
そして、最期には死を迎えなければならないのか?
そもそも死するいのちであるにも関わらず、なぜ自分は生まれてきたのか?
なぜ、生きなければならないのか?
どう生きていくことが出来るのか?
という苦悩を抱えていたのだ。

これらの苦悩は、現代の私も、そして、子どもや孫の世代も
必ず直面しなければならない人生の共通課題である。
だからこそ、
シッダルタはその生・老・病・死の苦悩をどのように受け止め・
分かち合い・乗りこえようとしたのかという点について、
「聞いてみたい」「自分の人生のヒントにしたい」
という人々がお釈迦さまの元に集い、また後世の人々が仏教徒となって
お釈迦さまの生涯や教えを語り継いできたのである。

 私は、各地のお寺に招かれて、布教使という職名で
ご法話をさせていただくことがある。
私が心がけているご法話のスタイルは、

初めて参られた方にとっても、わかりやすい法話
また、次も聞いてみたいと思っていただける法話
日常生活の場でふと思い出していただける法話

こんなことを思いながら20年近く試行錯誤を続けてきた。
初めてのお寺に寄せていただく場合は、
そのほとんどでこの絵本をスクリーンに投影しながら、
「人生のピンチは 真実の教えに出会うチャンス!」
という演題でご法話をさせていただく。

 平山郁夫画伯は、広島県瀬戸田町生まれ。
旧制中学3年時に、原子爆弾の投下により被災。
その後、原爆後遺症によって一時は生死の際をさまよったといわれている。
その79年の生涯において、お釈迦さまや仏教に関する絵画を数多く手がけられた。
各地の美術館には、貴重な作品が所蔵・展示されている。
本来はその現地に足を運び、一対一でその世界に対峙するのが理想なのだが
、なんとそれらの作品を元にこの絵本が出来上がっている。
しかも西村和子さんは、
「本書が子供たちにとって、平山画伯の絵画のすばらしさと、
仏教を正しく理解するきっかけとなってくれれば幸いです」
と記している。
「子どもの頃からいのちの事実に向き合い、
お釈迦さまの言葉に支えられて、限りある人生を精一杯生きてほしい」
という西村和子さんのメッセージなのだと、私は受け止めている。
出会って20年以上読み続けている。まだまだまだ読み飽きない絵本。
私だけではなく、多くの人々を導き続けている絵本である。
(記:源光寺住職 福間玄猷)

今日の絵本:
『平山郁夫のお釈迦さまの生涯』平山郁夫/画 西村和子/構成・文 博雅堂出版
http://www.hakugado.co.jp/bk08.html

投稿者について

福間 玄猷

1971年生まれ。本願寺派布教使・源光寺第14代住職 別名「絵本のお坊さん」 大阪府茨木市出身。平成8年三次市・源光寺へ入寺。《様々な経験を持った人々が集い、信頼できる温かなつながりを育む》そのような交流館を目指して、赤ちゃんからご年配の方まで世代を超えた活動を続けている。寺院や福祉施設はもちろん、各地の学校や保育所、コミュニティーセンター・いきいきサロンなどに招かれ、「いのち・こころ・真実を見つめる」ご法話や講演を重ねている。また、「子育て支援」「アドバンスケア・プランニング」「グリーフケア」を柱にした研修会も好評。子どもたちと富士山登山を3度完遂。グリーフケアアドバイザー1級/発達障害コミュニケーション初級指導者/つどい・さんあい 運営委員

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