「絵本のお坊さん」は、とてもうれしい。
世の中にこんなに素敵な絵本があるのですから。
また、それを紹介してくださる人がいるのですから。
そして、こんな猫がいるなんて!!
地元・広島を始め各地で甚大な被害をもたらした西日本豪雨災害を通して、
まだ心が揺さぶられている。
日常のお寺の法務に戻らねばと思いながらも、ふとした時に心が締め付けられる。
ボランティアで関わった現地の風景や被害に遭われた方々の表情が思い出されて、
気持ちが落ちる。
一緒にボランティアに行ってくださる仲間も
「お坊さんにいうことではないかもしれませんが、神や仏もないですね」と
思わず私に投げかけるほど、現地は大変な状況であった。
私は、その言葉に何かしら返そうとしてみたが、うまくいかなかった。
最大級の宿題をもらったと思った。
「玄猷さんが信仰している阿弥陀さんとは、いったいどのような仏さんですか」と。
それ以来、折々にその宿題を反芻している自分がいる。
元々、気持ちを言葉にするのは苦手であることと、
現地での衝撃があまりに大きいものだったから、
現地で感じたことや道中で考えたことを言葉に置き換えるには、
もう少し時間がかかるだろう。
ただ、その中でも、かすかな希望を感じることがある。
被災地である広島や岡山に駆けつけてくれるボランティアとの出会いである。
県内はもちろんだが、
福岡・宮崎、大阪・和歌山などからも駆けつけてくれていた。
被災から2月近くになる今頃は、当家の方々の疲れがどっと出る頃であるから、
一人でも多くの方々が関わってくださることが、何よりの力づけとなる。
まさに、人生は悲喜交々である。
心が揺さぶられ落ち着きを失っていた私に力を与えてくれたのが、
この絵本だ。
これまで私が出遇ってきたほとんどが創作絵本であるが、
「絵本のお坊さんの玄猷さんなら、きっと喜んでくれるでしょう」と
紹介してもらったのが、この絵本だ。
なんとこれは、ポーランドを舞台にした実話なのだそうだ。
だから、子どもたちに読み始める時には、
「よく聞いてくださいね。この絵本は、実は、実話なんです!」というと、
子どもたちはびっくりした顔をする。そして、食い入るように聞いてくれる。
近年、「よりそう」という言葉をよく耳にするけれど、
実際は、「言うは易し 行うは難し」である。
たとえ、隣同士で寝て寄り添っていたとしても
「同床異夢」ということもある私たち人間をはるかに超えて、
この猫はすごい!!
ただただ感心する。
何が、この猫にこのような力を与えるようになったのか、
詳しいことはわからない。
でも、これからはラディの姿を思い出しながら、
被災地を含めいろんな人との関わりを続けていきたい。
(記:源光寺住職 福間玄猷)
今日の絵本:
ねこの看護師 ラディ 文:渕上サトリーノ 絵:上杉忠弘 講談社
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