ご先祖を偲ぶだけで十分ですか お寺さまでの彼岸の法話会

2019年9月27日

 その日未明は台風による暴風が吹き荒れ、ほとんど眠れなかった。
先般の台風15号の被害を思い出して、今回もあのような大きな影響が出てしまうのではないかと
不安に駆られていたからだ。
朝になって見回してみると被害らしいものはほとんどなく、
お寺さまからも「無事に来られるか心配でした」とねぎらっていただけたが、
道中も何も心配はなかった。何事もなく到着できて、ホッとした。

 読経が終わり、いざご法話に入る時、「今日は死別のご縁でお参りされた方が多いです」
とお声かけがあった。
ご門徒さんとしっかりと関係性をつないでおられることが感じられ、
私もしっかりそれにお応えしようと、スイッチが入った。
 5才の子どもさんから85才のおじいさままで、本堂満堂のお参り。
教えを求める熱意も強く感じる。
4人の子どもさんが参ってくれていたので、法座の締めくくりに読もうと思っていた絵本を
「はじめに読みましょうか、それとも最後に読みましょうか」
と尋ねると、
「最後でいい!」
と4年生。つまり、この小学生は90分(途中休憩あり)のご法話を
最後まで聞いてくれるつもりなのだ。びっくりしたが、うれしかった。
 
 そこで、当初の予定通り大人向けのご法話で話し始める。
今日の講題は、「ご法事の目的」。
ご法事を経験したことがないという方は、ほとんどおられないだろう。
だから、この講題を見ても、何を今さらと思う人は多いだろう。
しかし、人間は同じことを経験していくと慣れが出てくる。
確かに毎回初体験のことばかりだと、常に緊張を強いられ身体が持たなくなるので慣れることも大切だ。
しかし、慣れによって、物事の目的や意味を忘れてしまうという危険性をはらんでいる。
だから、時々原点に立ち返ることが大切だと思っている。
私たちは何にためにやっているのか、その目的を確認する必要がある。
実際ご法事にお参りされた方に尋ねてみると、
返ってくる答えの多くは、「ご先祖を偲ぶため」というもの。
「では、偲ぶとは、具体的に何をどうすることですか」
と尋ねると、急にその場が静かになる。頭ではわかっているつもりだが、
言葉に置き換えることが案外難しいのである。
「偲ぶとは、縁あるものが集い、故人を思い出し、その思い出を語り、聞き合うということ」
とお話しすると、皆さんが「そうそう」という表情で深くうなずいてくださる。
「でも、ご先祖を偲ぶだけなら、僧侶は必要ですか?」
とたんに
「えっ!」「いわれてみたらそうだな」「でも、やっぱりいてほしい」
表情にそれぞれ変化が見られる。そこで、
「では、今日の法事はなぜ僧侶を呼んでいただき、ご本尊を安置して、お経を一緒にお勤めする必要があったのでしょうか?」
しばらくの沈黙が続く。
私がようやく言葉を加える。
「ご法事に参った一人ひとりが、自分自身のいのちの生老病死に目を向けること」
「そこで生まれた人生根本の問いや苦悩について、経典さらに僧侶に尋ねる」
とご法事の目的をお話しした。
 さらに、釈尊入滅から経典の編纂に至るエピソードを紹介し、
苦悩・煩悩を抱えて日々を歩む私を支え導くものが、経典の本来の姿だとご法話を締めくくった。
 最後には、私の今一押し(お通夜でも読む)の絵本『いのちの木』を読み語りして時間となった。
法座後は、ご住職とお昼をご一緒しながら法話会の感想や互いの近況を語り合い、大いに刺激を頂いた。

■本日の絵本
『いのちの木』ブリッタ・テッケントラップ/作・絵 森山 京/訳 ポプラ社/発行
https://www.poplar.co.jp/book/search/result/archive/2730037.html

■絵本のお坊さん問い合わせ先 
 名前:福間玄猷(ふくまげんゆう)
 住所:広島県三次市西酒屋町甲156 源光寺内
 電話:0824-63-5906
 メール:gfukuma@agate.plala.or.jp
 源光寺ホームページ:http://www.genkouji.com/
 Facebook:https://www.facebook.com/gfukuma
 絵本のお坊さんブログ:http://genkouji.com/blog/
 YouTube動画:NO.1 2019源光寺サマースクールの一コマhttps://www.youtube.com/watch?v=nGl8akzD2gQ&t=48s

■絵本のお坊さんが出来ること
1.仏さまのお話(=ご法話の会) ご依頼の場所へ出向き、
                  人生の確かなよりどころとして仏さまのお話しをします。
2.絵本の読み語り ご希望の場所に出向き、年齢にあわせた読み語りをします。
3.悩み事相談 人生・子育て・孫育て・人間関係・仏事などのご相談をお受けします。
4.お寺での楽しい行事をご紹介します。-門信徒会・仏教婦人会・お寺の子ども会などで、
                     新たな出会いと学びが広がります。
5.お坊さんとのコラボをお受けできます。お坊さんとの化学反応を楽しみませんか。
6.お寺という宗教空間をお貸しできます。深い気づきや発見があるでしょう。
7.お寺でのボランティアをご紹介します。
8.お墓の相続に関するご相談もお受けします。

投稿者について

福間 玄猷

1971年生まれ。本願寺派布教使・源光寺第14代住職 別名「絵本のお坊さん」 大阪府茨木市出身。平成8年三次市・源光寺へ入寺。《様々な経験を持った人々が集い、信頼できる温かなつながりを育む》そのような交流館を目指して、赤ちゃんからご年配の方まで世代を超えた活動を続けている。寺院や福祉施設はもちろん、各地の学校や保育所、コミュニティーセンター・いきいきサロンなどに招かれ、「いのち・こころ・真実を見つめる」ご法話や講演を重ねている。また、「子育て支援」「アドバンスケア・プランニング」「グリーフケア」を柱にした研修会も好評。子どもたちと富士山登山を3度完遂。グリーフケアアドバイザー1級/発達障害コミュニケーション初級指導者/つどい・さんあい 運営委員

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