報恩講とは 浄土真宗の開祖・親鸞さまのご法事 

2019年11月29日

 10月末から、ご門徒のお宅に参らせていただいている在家報恩講でのご法話。
その一部を紹介する。紙芝居「アマリリスのような女の子」も、
このご法話の中で読ませていただいている。
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 今日は、在家報恩講にお参りをさせていただき、有り難うございました。
報恩講とは、浄土真宗の開祖・親鸞さまのご法事です。
それぞれのお宅のご先祖のご法事をお勤めなさると同じように、
親鸞さまのご法事を全国の門信徒がそれぞれのご家庭・地域・お寺でお勤めなさる。
長年の伝統が受け継がれています。
 
 親鸞さまが90年の人生の中で明らかにしてくださったこと、その中の2つをお話しします。
1つは、私たちだれもが抱えている闇ということ。
2つ目には、その私に既に届いている阿弥陀仏の光ということです。
親鸞さまは、闇と光について明らかにしてくださいました。
 私たちが抱えている闇について、言葉を変えるとそれは煩悩という言葉になります。
もう少し表現を変えるならば、私たちはいつも自分の都合を最優先にして
物事を見て、考えて、行動しているということです。
一人一人が自分の都合を最優先に、物を見て、考えて、行動していますので、
その一人一人が集まるとそこにはすれ違いやトラブルや争いが生まれる。
そのすれ違いやトラブルや争いが生まれた時、それをどう考えるのか。
多くの場合は、「あの人が悪いから」「このことがこうだから」
と自分以外のことが原因で自分が思い通りにいかないと考えることが多いのです。
しかし、そもそも自分の見方や考え方や行動が偏っていないか、間違っていないか、
そこを振り返ることから教えているのです。
 そして、2つめ。私には、すでに阿弥陀仏からの光が届いているということ。
阿弥陀仏の光に出会うのは、死後ではなく、臨終ではなく、ただ今だ。 
と親鸞さまは明らかにされました。
その阿弥陀仏の光を表現を変えるならば「分け隔てない関わり」と表現することができます。
分け隔てない関わりとは、言葉の上では易しい表現だからわかったような気分になるけれど、
私たちが生きているこの現実社会は、いったいどのような姿をしているでしょうか。
深く踏みとどまって考えるなら、様々な分け隔ての中でこの現実社会が進んでいることに気がつきます。
人のいのちや人生について、国籍・学歴・職歴・経歴・年収・家族構成・
どのような考え方をされているか・どのような人生を歩まれたか・どのような最期であったか・
若い方か年配の方か・元気な方か病を抱えた方などなど。様々なことで区別が始まる。
区別なら横並びだから問題ないように思うけれど、
そこに知らず知らず、上下・優劣、そして時には差別の思いがわいてしまう。
これが、私たちの現実社会である。しかし、大多数の方がそのような中で生きているので、
それがいつの間にか当たり前になり、常識となり、世の中とはそういうものだ、
人生とはそのようなものだと考えるようになってしまう。
人のいのちや人生について、分け隔てをすることに何の問いも疑問も持たなくなる。
そして、人間が知らず知らず作り上げた「ものさし」に流されてしまう。
これが、私たちの抱えている闇の姿です。
 
 仏教は、人間がいつの間にか作り上げた「ものさし」に対して、
もう一つの「ものさし」を立てるものです。
それは、阿弥陀仏の智慧による「ものさし」である。
そして、その「ものさし」は、人間が知らず知らず作り上げた「ものさし」に対して、
「それは本当のことか」「本当はどうありたいのか」と問いを与え、問題を提起し、
自分や社会をふりかえるきっかけを与えるものです。
それが、本来の仏教のあり方です。
さらに、人間の「ものさし」による分け隔てに、自他共に振り回されている私たちに、
「本来、どのいのちも尊く、どの人の人生も大切である」と教えてきたのが仏教です。
そのうえで、親鸞さまは、阿弥陀仏の働きを「分け隔てない智慧の光」と受け取り、
「私たちは、その光にすでに出会っているのだ」と教えてくださったのです。
その親鸞さまを偲び、お礼を申しあげるのが今日の報恩講なのです。
ご家族と共に、尊い仏縁をいただき、お礼を申しあげます。

(なお、源光寺での報恩講法座は、こちらのサイトを参照してください)

■ご紹介:「浄土真宗の法話案内」
http://shinshuhouwa.info/article/index.php?id=40061

投稿者について

福間 玄猷

1971年生まれ。本願寺派布教使・源光寺第14代住職 別名「絵本のお坊さん」 大阪府茨木市出身。平成8年三次市・源光寺へ入寺。《様々な経験を持った人々が集い、信頼できる温かなつながりを育む》そのような交流館を目指して、赤ちゃんからご年配の方まで世代を超えた活動を続けている。寺院や福祉施設はもちろん、各地の学校や保育所、コミュニティーセンター・いきいきサロンなどに招かれ、「いのち・こころ・真実を見つめる」ご法話や講演を重ねている。また、「子育て支援」「アドバンスケア・プランニング」「グリーフケア」を柱にした研修会も好評。子どもたちと富士山登山を3度完遂。グリーフケアアドバイザー1級/発達障害コミュニケーション初級指導者/つどい・さんあい 運営委員

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