今から20年近く前のこと。
私が広島県三次市のお寺に入寺して、まだ3年も満たない冬のある日。
長い間、脳梗塞で療養をされていたおじいさんが亡くなられた。
通夜・葬儀が終わり、孫にあたる中学生がおじいさんの七日参りに毎週通ってくれる。
その中学生は同居ではなく、ちょうどスープの冷めない距離にある自宅から
自転車をこいで駆けつけてくれている。
満中陰まで毎週ある七日参りで、一緒にお経を唱え、ご法話も。
難しい専門用語を使うことは出来ないし、世間話でお茶を濁すことも出来ない。
中学生が気に入るようなスポーツやゲームの話も、私は出来ない。
多感で思春期真っ最中の中学生に、どんなご法話ができるだろうか。
当時の私にとって、最大の課題だった。
そんなある日、2時間かけて研修会に向かう道中、本屋さんにふと立ち寄った。
入り口から近いところに、その本が平積みされていた。『葉っぱのフレディ』というタイトル。
手にとってぱらぱらとめくり「こんな絵本が出たのだ!」と驚きを持ちながらも、
お店を出た。車に乗り込もうとした私の脳裏に、彼の顔が浮かんだ。
「よし、今度の七日参りで読んでみよう!」
幼い頃からお寺で育てられた私は、毎月の法話会や学びを重ねていくことで、
仏教や浄土真宗の教えそのものに支えられてきた実感があった。
「僧侶は仕事」という以前に生き方そのものであったし、
仏教という真実はだれにも必ず伝わるものだと思っていた。
しかし、環境が変わり様々な方々と出会う中で、仏教という真実がなかなか伝わらない現実に
数多く直面することとなる。
当初は、「なぜわかってもらえないのだろう」と相手の関心の薄さに、
腹立たしさを感じることが多かったが、
次第に「どのような工夫をすれば受け止めていただけるだろうか」と、
言葉や思いが伝わるための環境作りを試行錯誤するようになっていく。
(続く)
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などで、新たな出会いと学びが広がります。
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わかりやすくお話しします。