私もあの時、マスクで失敗した

2020年2月18日

 今でも忘れることができない。今から25年前(1995年)の阪神・淡路大震災。
 当時、私は大阪にいた。自宅は、甚大な被害にはならなかったが、大きな揺れを何度も体験した一人だ。
とても怖かった。こんなことが起こってしまうなんて、すぐには受け止められなかった。
でも、そんな中、日本だけではなく、世界各地からボランティアが駆けつけてくれた。人々の温かい心にふれて、
生きる元気がよみがえってきたのを、今でもありありと思い出すことができる。
 学生だった私は、学年末の試験を控えていた。被害の大きさに居ても立ってもいられなかったが、
その試験が終了してから、遅ればせながら神戸市長田区へボランティアに入った。
長田区役所から歩いてすぐそばの川沿いの公園に、その日初めて出会ったメンバーとテントを立てた。
 
 その日から一月半ほど。関わった活動内容は、大きく3つ。
1.3月3日の桃の節句にあわせて、殺風景な各地の避難所に桃の花を届けよう。
2.なかなか入浴ができない方々のために、移動風呂を設置しよう。
3.復興作業にあたるボランティアのために、全国からマスクを集めよう。

 今日はその中の3番目、マスクにまつわる私自身の失敗だ。
 毎日開かれるミーティングで、活動に関わる様々な報告が上がる。
ボランティアのニーズが読み上げられ、翌日の作業のマッチングが行われ、注意事項が確認される。
そのミーティングで「各地から駆けつけてくれるボランティアへのマスクが足らない」との声が上がったことがあった。
近隣のお店は被災しているため、営業しているお店は少ない。離れた地域まで買いに行かねばならない。
しかし、ボランティアの人員は不足しているので、買いに出かける人手はない。
まとめ役を引き受けた私は、メンバーと相談した。地域に立ち上がった臨時の放送局で、呼びかけることにした。
「マスクを送ってください」と全国へ呼びかけた。マスクは、すぐには届かなかった。気が焦っていた私たちは、少し落胆した。
しかし、パーソナリティーとの掛け合いで私の声がラジオに流れた4~5日後頃だったか、区役所にマスクが集まり始めた。
うれしくなった私は、全国から届いたマスクを毎日数えた。枚数が増えるたびに、ラジオの力に感動した私たちだった。

 しかし、その数週間後、「お店のマスクがなくなっている。長田区役所ばかりに集まっているのではないか」という電話が入った。
冷や水をかけられたように、私はハッとした。私は、手段と目的を見誤ってしまったのだ。
本当は、マスクをつけて安全に復旧活動に関わってもらうことが目的だったのだ。
それにもかかわらず、たくさん集めることに意識が向いてしまったのだ。
ボランティアだけでなく、地元の方々も当然マスクを必要としていたことをすっかり見失っていたのだ。
 その日のミーティングで、これまでにたくさん送られてきたマスクは、ボランティのための必要最小限を確保し、
それ以外は地元の方々へ配って歩こうということに決まった。
 
 初めての出来事に対して、正しい判断を下すのは案外難しい。
人間には失敗がつきものであるから、よかれと思って一生懸命にやっていることでも、時々冷静に振り返える必要があること。
時々刻々変わっていく状況を見誤っていないか。手段と目的が間違っていないか。木を見てはいるが、同時に森も見えているか。
そして、判断の誤りに気づいたならば、できる限り早くに軌道修正をすること・・・。
 
 新型コロナウイルスに関する報道を見ているうちに、25年前の阪神・淡路大震災とあの時のマスク騒動を思い出してしまった。
本当に恥ずかしい限りだ。

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投稿者について

福間 玄猷

1971年生まれ。本願寺派布教使・源光寺第14代住職 別名「絵本のお坊さん」 大阪府茨木市出身。平成8年三次市・源光寺へ入寺。《様々な経験を持った人々が集い、信頼できる温かなつながりを育む》そのような交流館を目指して、赤ちゃんからご年配の方まで世代を超えた活動を続けている。寺院や福祉施設はもちろん、各地の学校や保育所、コミュニティーセンター・いきいきサロンなどに招かれ、「いのち・こころ・真実を見つめる」ご法話や講演を重ねている。また、「子育て支援」「アドバンスケア・プランニング」「グリーフケア」を柱にした研修会も好評。子どもたちと富士山登山を3度完遂。グリーフケアアドバイザー1級/発達障害コミュニケーション初級指導者/つどい・さんあい 運営委員

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