最後のお参りで出てきたものは?

2021年4月1日

「お仏壇を引き取ってもらうので、最後のお参りをしてください」

今年の1月、広島在住の0さんから電話が入った。日程を調整して、電話を切る。
数ヶ月後、三次市内のお宅に2組の兄弟夫婦が集まられ、私を迎えてくださった。 そのお宅は、守っておられた長男さんが亡くなられ、5年近く空き家となっていた。この間、他の兄弟が時々実家に来て、周囲の草取りや家の風通しをしてなんとか維持してこられたようだが、それぞれが高齢になってくると、複数の家の世話は難しくなってくる。次第に家も痛みもひどくなり、お仏壇が粗末になっていることにも心を痛めた兄弟が、大きな決断をされたのだった。

2組の兄弟夫婦が時間をかけて片付けをし、掃除をしてくださったのだろう。思いのほか小綺麗になった仏間に通された。この仏間に参らせていただくのは、もう10年以上も前になるかも知れない。これまでに、私自身がおばあさん・お嫁さん・そして長男さんをお送りしたのだが、長男さんが亡くなられた時は会館でのお葬儀だったために、このお宅でのお参りは出来なかった。まじまじとお仏壇を眺めご本尊を合掌しながら、在りし日を振り返った。そして、今日は最後のお参り。寂しい思いを抱きながら正信偈をみなで称え、思い出話を聞かせてもらった。1時間後にはお仏壇屋さんが引き取りに来られるとのことで、ろうそくを消しお仏壇から仏具を出すことにする。最後にご本尊やお脇掛けを外し扉を閉めようとした時、何やら残っているものが見えた。

そっと取り出したものが、1枚目の写真である。「これは懐中尊号と言って、懐に入れておくためのご本尊のことです。何かご存じですか?」とお尋ねしたら、兄弟の一人が「それは、父が戦場に持って行っていたものだと思います」と応えてくださった。いのちがけで戦場に出征し、やっとの思いで復員されたお父さまは、そのご本尊をお仏壇の一番大事なところに置いておられたようなのだ。兄弟の思い出話が、さらに広がった。教科書でしか知らない私が、この懐中本尊を通して貴重なお話を聴かせていただくことが出来た。帰りがけに、おばあさんが愛読されていた仏教書を形見分けとしていただいた。(おばあさんは法座の度に、演台の真ん前のお聴聞を欠かしたことのない「お同行さん」として、今も私の眼に焼き付いている)

実家に直接足を運び、片付けをし、お仏壇に座り、お経をあげ、お仏壇をおさめる。ご兄弟は、その一つ一つに、幼い頃からの思い出をありありと思い出されたことだろう。跡継ぎをするはずだった兄に代わり家をたたまなければならないことを申し訳なく思いながらも、自分たちのできることを精一杯なさったご兄弟であった。ご当家の思い出は、あの懐中本尊とともに、次の世代にきっと語り継がれていくだろう。この瞬間に立ち会えたことを、まさに不思議なご縁と受け止めている。

■新たな仏縁の創造を願ってご紹介
浄土真宗本願寺派ホームページhttp://www.hongwanji.or.jp/
源光寺ホームページ http://www.genkouji.com/
【はじめての浄土真宗】「正信念仏偈」現代語訳を聞くhttps://www.youtube.com/watch?v=XHidnswZxQM
かけあい法話「諸行無常ってどんな意味?」

樹林葬型公園墓地「びおらの丘」 http://www.genkouji.com/viola.html
お坊さんが必ず答えてくれるお悩み相談サイト hasunoha(ハスノハ)https://hasunoha.jp/
絵本のお坊さんブログ http://genkouji.com/blog/
絵本のお坊さん-福間玄猷YouTubeサイト
https://www.youtube.com/channel/UCc73yUyaufMqtftsDFuoCoA?view_as=subscriber
2020「三好春樹さん公開講演会」前半

仏教書朗読 『あなたがあなたになる48章』第44章

仏教説話『だいじょうぶだよ へいきだよ』(英語版)
https://www.youtube.com/watch?v=oaltcYtm0lE
福間玄猷 × 夜な夜なZoomバル コラボ企画その1
https://www.youtube.com/watch?v=YmUHZgFEWQw&t=5069s
築地本願寺(浄土真宗本願寺派)ホームページ https://tsukijihongwanji.jp/

■絵本大好き住職が出来ること。
1.仏さまのお話(=ご法話の会) ご依頼の場所へ出向き、人生の確かなよりどころ
として仏さまのお話しをします。
2.絵本の読み語り ご希望の場所に出向き、年齢にあわせた読み語りをします。
3.悩み事相談 人生・子育て・孫育て・人間関係・仏事などのご相談をお受けします。
4.お寺での楽しい行事をご紹介します。-門信徒会・仏教婦人会・お寺の子ども会
などで、新たな出会いと学びが広がります。
5.お坊さんとのコラボをお受けできます。お坊さんとの化学反応を楽しみませんか。
6.お寺という宗教空間をお貸しできます。深い気づきや発見があるでしょう。
7.お寺でのボランティアをご紹介します。
8.お墓の相続に関するご相談もお受けします。(樹木葬型公園墓地びおらの丘)
9.仏教入門講座をおすすめします。仏教の教えや作法のイロハから、
わかりやすくお話しします。

投稿者について

福間 玄猷

1971年生まれ。本願寺派布教使・源光寺第14代住職 別名「絵本のお坊さん」 大阪府茨木市出身。平成8年三次市・源光寺へ入寺。《様々な経験を持った人々が集い、信頼できる温かなつながりを育む》そのような交流館を目指して、赤ちゃんからご年配の方まで世代を超えた活動を続けている。寺院や福祉施設はもちろん、各地の学校や保育所、コミュニティーセンター・いきいきサロンなどに招かれ、「いのち・こころ・真実を見つめる」ご法話や講演を重ねている。また、「子育て支援」「アドバンスケア・プランニング」「グリーフケア」を柱にした研修会も好評。子どもたちと富士山登山を3度完遂。グリーフケアアドバイザー1級/発達障害コミュニケーション初級指導者/つどい・さんあい 運営委員

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA