「経験した者にしかわかりません!!」

2021年7月15日

ご門徒さんの七日参りや月参りでの一コマ。この言葉を耳にする度に、私は、ご門徒さんとの間に目には見えない大きな壁を感じて、自分の無力さに打ちのめされ、身体が縮まってしまっていた。「ああ、私にはわからないのだ。私には何も出来ないのだ」と。そんなことがしばらく続いたことがきっかけで、ご遺族の抱える悲歎にどのように関わることが出来るだろうかと問いが生まれ、グリーフケアの学びにつながった。
あれからずいぶん年を重ね、私自身も様々な別れや経験を重ね、ご遺族のその後に関わることも増えた。一見すると冒頭の言葉は、ご遺族の悲歎や苦悩の深さを示し、時には周囲の関わりを拒絶するかのように受け止められる。だから、周囲の人たちも「しばらくそっとしておきましょう」とささやきあって、(良かれと思っているかも知れないが)関わり自体が疎遠になり、ご遺族が本当に一人ぼっちになってしまうというケースも多く見てきた。
「わかり合うことは、実は簡単ではない」と、最近思うことが増えていった。人類の長い歴史を辿ってみると、自分の心の内を他人に全て語り、共感・納得してもらうことなど不可能だったのではないか。十人十色という言葉があるように、本来一人ひとりの価値観は違うものだ。だから、誤解を恐れずにいうなら「経験した者にしかわかりません!!」は、実はお互いさまなのだ。

では、「わかり合うことは、難しい」と自分の気持ちに蓋をしたのだろうか。確かに、口をつぐんでしまう時もあるだろう。しかし、その時期が過ぎた時、人類は、言葉にならない様々な思いを言葉以外に置き換えて、なんとか伝えようと分かち合おうとしてきたのではなかったか。例えば、音楽・美術・芸能・踊り・スポーツ・儀式・祭り・会食などなどが、その役割を担ってきたと捉えている。その場・その時間に共にいることで、肌から吸収しうるものがたくさんあったと想像する。

悲しみに限らず、大きな喜びや感動についても同じである。「感無量です」という言葉がある。「感慨無量」という四字熟語が語源となっており、「感慨」は「心に深く感じて思いにふけること」、「無量」は「計り知れない程大きい」といった意味になる。この意味から伺えるように、「今の気持ちを一つ一つ言葉に置き換えて伝えることが出来ないほど、私の気持ちは00だ」という感情を、なんとか表現したくて出来上がった言葉の一つだ。

このような人類の営みの豊かさに気づいた時、「経験した者にしかわかりません!!」という言葉も、拒絶から模索へと受け止め方が変わっていく。そして、「完全にはわからないけれど、わかろうとする」心や気持ちやしぐさが相手に届いた時、「充分伝えきることは出来ないが、伝えてみようかな」という相手の動きが促されるきっかけになるのではないだろうか。

 

■新たな仏縁の創造を願ってご紹介
『みちしるべ 八正道シリーズ 正思惟 正しい考え方』実るほど頭の下がる稲穂かな

築地本願寺(浄土真宗本願寺派)ホームページ https://tsukijihongwanji.jp/
浄土真宗本願寺派ホームページhttp://www.hongwanji.or.jp/
源光寺ホームページ http://www.genkouji.com/
【はじめての浄土真宗】「正信念仏偈」現代語訳を聞くhttps://www.youtube.com/watch?v=XHidnswZxQM
樹林葬型公園墓地「びおらの丘」 http://www.genkouji.com/viola.html
お坊さんが必ず答えてくれるお悩み相談サイト hasunoha(ハスノハ)https://hasunoha.jp/
絵本のお坊さんブログ http://genkouji.com/blog/
絵本のお坊さん-福間玄猷YouTubeサイト
https://www.youtube.com/channel/UCc73yUyaufMqtftsDFuoCoA?view_as=subscriber
かけあい法話「お釈迦さまってどんな人?」https://www.youtube.com/watch?v=8O7dlG1I1sM
仏教説話『だいじょうぶだよ へいきだよ』(英語版)
https://www.youtube.com/watch?v=oaltcYtm0lE

■絵本大好き住職が出来ること。
1.仏さまのお話(=ご法話の会) ご依頼の場所へ出向き、人生の確かなよりどころ
として仏さまのお話しをします。
2.絵本の読み語り ご希望の場所に出向き、年齢にあわせた読み語りをします。
3.悩み事相談 人生・子育て・孫育て・人間関係・仏事などのご相談をお受けします。
4.お寺での楽しい行事をご紹介します。-門信徒会・仏教婦人会・お寺の子ども会
などで、新たな出会いと学びが広がります。
5.お坊さんとのコラボをお受けできます。お坊さんとの化学反応を楽しみませんか。
6.お寺という宗教空間をお貸しできます。深い気づきや発見があるでしょう。
7.お寺でのボランティアをご紹介します。
8.お墓の相続に関するご相談もお受けします。(樹木葬型公園墓地びおらの丘)
9.仏教入門講座をおすすめします。仏教の教えや作法のイロハから、
わかりやすくお話しします。

 

投稿者について

福間 玄猷

1971年生まれ。本願寺派布教使・源光寺第14代住職 別名「絵本のお坊さん」 大阪府茨木市出身。平成8年三次市・源光寺へ入寺。《様々な経験を持った人々が集い、信頼できる温かなつながりを育む》そのような交流館を目指して、赤ちゃんからご年配の方まで世代を超えた活動を続けている。寺院や福祉施設はもちろん、各地の学校や保育所、コミュニティーセンター・いきいきサロンなどに招かれ、「いのち・こころ・真実を見つめる」ご法話や講演を重ねている。また、「子育て支援」「アドバンスケア・プランニング」「グリーフケア」を柱にした研修会も好評。子どもたちと富士山登山を3度完遂。グリーフケアアドバイザー1級/発達障害コミュニケーション初級指導者/つどい・さんあい 運営委員

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA