6年生に『アンパンマン』の読み聞かせ やなせさんから学んだ子どもたち

2025年3月14日
ある平日の昼過ぎ、私は地元の小学校に呼ばれました。読み聞かせで一緒に思い出を創った6年生から、「感謝の集い」のご案内をもらったのでした。地域の大先輩3人もおいでになっていました。30年以上の伝統を引き継いで毎年6年生が取り組む和太鼓の演奏を聞かせてもらったり、一緒にお茶を飲んだり、それぞれへのお礼のメッセージをプレゼン形式で聞かせてもらったりと、とても楽しい時間でした。その1週間後には、再び学校を訪れました。この日は、卒業を間近に迎えた6年生へ最後の読み聞かせをするためです。
いつも、読み聞かせは、前日までに自分なりのテーマを決めて絵本を選びます。通常は20分という限られた時間ですから、枕とまとめのお話をはさんで読む絵本は1冊。また、こちらの押しつけにならないよう2冊を持参し、どちらか1冊を子どもたちに選んでもらうようにしています。
今回は、小学校卒業を祝い、中学校入学という門出を応援する意味で『たくさんのドア』、そして、どんな悲しみや苦しみも大切なきっかけになるという意味で『アンパンマン』を準備しました。あわせて、先日の「感謝の集い」に招いてくれたお礼の手紙も持参しました。
この日は、「最後ですから、時間を気にせずやってください」との先生のご配慮で、2冊とも読むことが出来ました。
『アンパンマン』を読んだ後、「この作者であるやなせたかしさんは、なぜ、自分の顔を食べさせるようなお話を書いたと思いますか?」と尋ねてみました。すると、子どもの一人が
「戦争」
とつぶやきました。
何も知らない子どもたちに、教えてあげようと思っていた私は、びっくりしました。「アンパンマン」誕生の背景となっていた、やなせたかしさんご自身の辛い戦争体験のことを、子どもたちは既に知っていたのでした。
私「え、どこかで読んだことがあるのかな?」
6年生A「いえ、学校で習いました」
6年生B「確か、教科書に載っています」
その子は、5年生で使った国語の教科書を開いて見せてくれました。
私も、後からその教科書を読ませてもらいました。その冒頭は、あの東日本大震災の被害に遭いながら、「アンパンマン」の歌に励まされている子どもたちの様子が書かれてあり、その子どもたちのために再びやなせさんが奮闘する様子が描かれているのでした。
自分たちが何気なく視ていたアニメ番組「アンパン」誕生の背景に、こんな辛い体験が隠れていたことを知った子どもたちは、どんな気持ちだったでしょうか?昨年は、ロシア・ウクライナ戦争で多くの人々のいのちと生活の犠牲が増えている時期ですから、6年生とはいえ、色々と感じたり、考えたりすることが多かったのではないでしょうか?
また、東日本大震災に関しても、様々な報道を見聞きしてきた子どもたちです。戦争や災害など悲しい現実を思う時、やなせたかしさんのように、どのような苦しみ悲しみからも大切なものを学び取り、新たな日々を創り出す底力を、まず大人の私たちが示していきたいです。

投稿者について

福間 玄猷

1971年生まれ。本願寺派布教使・源光寺第14代住職 別名「絵本のお坊さん」 大阪府茨木市出身。平成8年三次市・源光寺へ入寺。《様々な経験を持った人々が集い、信頼できる温かなつながりを育む》そのような交流館を目指して、赤ちゃんからご年配の方まで世代を超えた活動を続けている。寺院や福祉施設はもちろん、各地の学校や保育所、コミュニティーセンター・いきいきサロンなどに招かれ、「いのち・こころ・真実を見つめる」ご法話や講演を重ねている。また、「子育て支援」「アドバンスケア・プランニング」「グリーフケア」を柱にした研修会も好評。子どもたちと富士山登山を3度完遂。グリーフケアアドバイザー1級/発達障害コミュニケーション初級指導者/つどい・さんあい 運営委員

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