どんな仕事にも見えない手間がある 見えない手間にも敬意を

2025年6月13日

梅雨の晴れ間は、外仕事をするには本当に貴重ですね。ここぞとばかりに、お寺の境内や墓地の草刈り、除草剤散布、外回りの草取りに汗を流す毎日です。雨が降れば、草は(頼んでもいないのに)勢いよく伸びますから、まさに時間との戦いです。エンジン式の草刈り機を使った急勾配の場所での作業は、なかなかの重労働です。

お寺の住職と聞くと、あなたはどのような姿を思い浮かべますか。ご法事やお葬式でお経を読んでいる姿を思い浮かべる人は多いでしょう。「でも、それ以外は何をしているのですか?」という質問が多く聞かれます。実は、ご法事やお葬式をお勤めする以外にも、お寺の伽藍を整備し、お参りに来られる方々が少しでも気持ちよく心安らかに過ごしていただけるようにと、日々様々な作業や準備を行っているのです。例えば、仏花の生け替え、ストーブから扇風機の入れかえ、本堂に敷いていた絨毯を取り外しなどがあります。本格的な梅雨の対策として、今回は天水受けの排水修繕も行いました。これはあくまでお寺の裏側であり、どんな仕事にも一般消費者からは見えにくい地道な準備や手間、そして、それを支える人々の思いがあると思います。

ここ最近は、お米の流通や価格について様々な報道を目にします。日本に生活する私たちにとってお米は主食であり、これまで当たり前のようにご飯をいただいてきました。しかし、今回の報道を通して、私たちは(農業政策を含む)お米の裏側についてあまり知らなかったと思いました。一粒のお米が私たちの口に入るまでに、どれほど多くの手間がかかっていたかということを。お米は、田植え・水の管理・草取り・稲刈り・乾燥・籾摺りをはじめとする「八十八の手間」がかかっていると、子どもの頃に教わったことがありました。これに、流通という視点を加えると、さらに多くの手間がかかっているのですね。その一つひとつに、大変な労力と時間が費やされているのです。

しかし、普段の私たちが気に留める点は、その「結果」としての価格やサービスだけにとどまっていたのではないでしょうか?価格やサービスをの背景には、数えきれない「見えない手間」と、それに関わる人々の「見えない思い」が存在していることを、うっかり見落としていました。だからこそ、その「見えない手間」に少しでも思いを馳せ、敬意を持つこと。自分自身もまた、誰かのために見えないところで心を尽くすこと。そのような一人ひとりの取り組みによって、私たちの地域や社会をわずかずつでも改善していきたいですね。

あなたが日頃心がけている「見えない手間」とは、どのようなものですか?

投稿者について

福間 玄猷

1971年生まれ。本願寺派布教使・源光寺第14代住職 別名「絵本のお坊さん」 大阪府茨木市出身。平成8年三次市・源光寺へ入寺。《様々な経験を持った人々が集い、信頼できる温かなつながりを育む》そのような交流館を目指して、赤ちゃんからご年配の方まで世代を超えた活動を続けている。寺院や福祉施設はもちろん、各地の学校や保育所、コミュニティーセンター・いきいきサロンなどに招かれ、「いのち・こころ・真実を見つめる」ご法話や講演を重ねている。また、「子育て支援」「アドバンスケア・プランニング」「グリーフケア」を柱にした研修会も好評。子どもたちと富士山登山を3度完遂。グリーフケアアドバイザー1級/発達障害コミュニケーション初級指導者/つどい・さんあい 運営委員

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