単に安心を与えるだけの言葉ではなかった 『だいじょうぶだいじょうぶ』

2025年7月4日

今回紹介する絵本は、『だいじょうぶ だいじょうぶ』(いとうひろし/作・絵 講談社/発行)です。この絵本は、孫である一人の男の子とおじいちゃんの何気ない日常が取り上げられています。2人のやりとりが、私たち大人も言葉や人との関わりに支えられているかを、静かに教えてくれます。ほのぼのとした絵の雰囲気も大人気で、子どもの情緒安定や自己肯定感を育む絵本として長く愛読されている1冊です。

この絵本を読んだ人の多くは、「だいじょうぶ だいじょうぶ」という言葉に、まず注目するでしょう。それに加えて、私にとっては、大人になって忘れてしまっていた子どもの一面を、この絵本が思い出させてくれました。
例えば、
「大人にとっては単なる散歩も、子どもにとっては大冒険なのだ」
「大人にとっては子どもの成長は喜ばしいこですが、当の本人は、いろんなことを知ることで不安なことも増えていくのだ。」
だから、大人目線だけでは、子どものことが意外とわからなくなるんだ、ということに。

そして、
何度も「だいじょうぶだいじょうぶ」を繰り返すおじいちゃんですが、実は、そこには様々な意味の違いが隠れていることにも気づきます。
「だいじょうぶ だいじょうぶ」
それは、むりして みんなとなかよくしなくてもいいんだってことでした。
「だいじょうぶ だいじょうぶ」
それは、このよのなか、 そんなにわるいことばかりじゃないって ことでした。

孫と関わりその日々の様子を知っているからこそ、「だいじょうぶ」に様々な意味を込めてつぶやくことが出来るのですね。孫も、それをしっかり受けとめているので、本当に「大丈夫」になるのですね。もし、全く関わりのない人から「だいじょうぶだいじょうぶ」と言われたら、どうでしょうか?

いえ、孫も、おじいちゃんに言われた時、よくわかっていなかったかも知れません。年を重ね病の床にいるおじいちゃんを支える自分になった時、その孫はおじいちゃんとのことを思い出したのかも知れませんね。その時初めて、「だいじょうぶ だいじょうぶ」に込められた意味の豊かさに気づいたのかも知れません。

言葉を通して自分をふりかえるだけでなく、仏さまの教えをお伝えする役割を担っている私にとっては、この絵本に描かれたおじいちゃんと孫の関係性が大切なお手本になりました。
言葉を単なる記号として消費するのではなく。
意味を含めて、相手につぶやくことが出来ること。
言葉に含まれた意味までくみとれる関係性であること。
その時に全ての意味に気づいてもらえなくても、時機が来たときに思い出し意味まで受け取ってもらえる言葉をつぶやくことが出来ること。

小学校の教科書教材にもなったこの絵本ですが、大人にとっても様々なことを気づかせてくれる絵本の1冊です。
(もし、絵本の読み語りを聞いてみたい、日常の自分をふりかえってみたいと感じられた方には、以下のリンクから、リザストでのオンラインでのセッションをご用意しております。お気軽にお声かけくださいね。
https://www.reservestock.jp/pc_reserves_v2/courses/43862

明日もあなたにとって、心穏やかなひとときでありますように。

投稿者について

福間 玄猷

1971年生まれ。本願寺派布教使・源光寺第14代住職 別名「絵本のお坊さん」 大阪府茨木市出身。平成8年三次市・源光寺へ入寺。《様々な経験を持った人々が集い、信頼できる温かなつながりを育む》そのような交流館を目指して、赤ちゃんからご年配の方まで世代を超えた活動を続けている。寺院や福祉施設はもちろん、各地の学校や保育所、コミュニティーセンター・いきいきサロンなどに招かれ、「いのち・こころ・真実を見つめる」ご法話や講演を重ねている。また、「子育て支援」「アドバンスケア・プランニング」「グリーフケア」を柱にした研修会も好評。子どもたちと富士山登山を3度完遂。グリーフケアアドバイザー1級/発達障害コミュニケーション初級指導者/つどい・さんあい 運営委員

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