あの時のご意見を活かして、私は成長出来ているだろうか?

2023年1月21日

今晩は、80代のご門徒さんのお通夜でした。
コロナ下ですからお参りの人数は少なかったですが、濃い親戚が集うしみじみとしたお通夜でした。6年前にお祖母ちゃまのお葬儀をさせていただき、その後のご法事やお盆にもお参りをさせていただいたことのあるお宅でした。
当時小学生だったお孫さんも今では10代半ばを過ぎ、立派に成長されていました。
「絵本を読んでもらいましたね」
と私のことを思い出してくれたようです。私も、再会がうれしかったです。思春期の多感な年代ですから、特に丁寧にお話(=ご法話)をさせていただこうと思いました。
『平山郁夫のお釈迦さまの生涯』を持参し、入滅涅槃の場面を紹介しながら、お通夜の目的の一つである「亡き人を偲ぶ」ことに焦点をしぼってお話をさせていただきました。

以下に再掲しますが、私はお通夜を勤める度に、2年前に聞いたご門徒さんのご意見がよみがえるのです。「お坊さんににとっては同じことの繰り返しかも知れませんが、門徒にとって1回1回のお葬儀は一大事である」と厳しく教えられました。
それ以来、できるだけご門徒さんやお参りの方々に寄り添うことを心がけながら、丁寧にお勤めしてきました。
明日、源光寺では御正忌法座ですが、合間でお葬儀に駆けつけ、火葬・お骨拾い後の還骨へと仏縁が続きます。

(以下は、およそ2年前のブログ記事)
Sさんは、市内で会社を経営されている社長さん。仕事柄お付き合いも広いため、様々な冠婚葬祭に参加されるようだ。お通夜やお葬式もその一つで、お寺の私たちよりも、各宗旨にまたがるいろんなお通夜やお葬式に参拝され、それぞれのお坊さんにも会っておられるとのこと。在家報恩講をおつとめしたあと、
Sさん「お経のあとの法話が、苦痛なんです。一番大事なところが苦痛なのは、残念です。聞いていると、故人のことを十分知らずに型どおりの話をしているなと思いますし、上から目線で、お経の解説だけをして帰るお坊さんもいます。話が難しかったり、ぼそぼそした話しぶりで聞こえなかったり、会葬席から「まだ終らんかな」とつぶやきが聞こえることもあります。話が堂々巡りの人もいて、前もって要点をまとめて来ればいいのにと思います。それぞれ貴重な時間を割いて参っているのだから、故人をしっかり偲んで、教えを聞くという時間にしたいんです。般若心経の空という考え方も、奥が深いですよね。そんな教えをしっかり伝える場にしてほしいです。まあ、(源光寺の)住職さんは、わりとましなほうですが・・・」
私「そうなんですね。私たち僧侶は、案外よそのお宅のお通夜・お葬式に参列することがないので、他のお寺さまのことは知らないんですよ。Sさんのように、ご門徒さんのほうが、いろんなお宅のお通夜やお葬式に参拝されているんですよね」
Sさん「ええ。今年はコロナでお参りすることも少なくなっていますが、これまでいろんな所に参らせてもらっています。お葬式は、必ず一時間はかかってしまいますから、仕事が忙しい時にはお通夜に参ることが多いですね。お通夜ならお焼香までして、途中で帰ることが出来ますから」
私「これまで参られた中で、このお坊さんはキラリとしていたなあと、印象に残ったお坊さんはいらっしゃいましたか」
Sさん「あまりいませんね。仕事柄いろんなお坊さんとお付き合いもありますが、こんな話はだれにも言えませんから、住職さんに言っておきます」
私「有り難うございます。大変耳の痛いご意見です。そこまではっきりとおっしゃってくださるので、私も少し突っ込んでお話しをするのですが、浄土真宗は、お寺での聴聞を最重要に掲げて活動してきたように思います。そのことは大変素晴らしいことなのですが、それ以外の、例えばお通夜やご法事のご法話についてあまり重要視されてこなかったのではないかという実感があります。ですから、お寺でのご法話に関する研修は、様々な制度が重層的に組まれてきましたが、お通夜やご法事のご法話についての研修はほとんどなされていないのが、私自身とても残念です。だから、自分自身で様々な学びを重ね、試行錯誤している最中なのです。今日のSさんのお言葉は、お寺や僧侶、そして浄土真宗に対する期待のお言葉として、しっかり聞かせていただきました。これからも、応援よろしくお願いします」

投稿者について

福間 玄猷

1971年生まれ。本願寺派布教使・源光寺第14代住職 別名「絵本のお坊さん」 大阪府茨木市出身。平成8年三次市・源光寺へ入寺。《様々な経験を持った人々が集い、信頼できる温かなつながりを育む》そのような交流館を目指して、赤ちゃんからご年配の方まで世代を超えた活動を続けている。寺院や福祉施設はもちろん、各地の学校や保育所、コミュニティーセンター・いきいきサロンなどに招かれ、「いのち・こころ・真実を見つめる」ご法話や講演を重ねている。また、「子育て支援」「アドバンスケア・プランニング」「グリーフケア」を柱にした研修会も好評。子どもたちと富士山登山を3度完遂。グリーフケアアドバイザー1級/発達障害コミュニケーション初級指導者/つどい・さんあい 運営委員

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