間もなくお彼岸-仏さまの世界に生まれたおじいちゃん『おじいちゃんのごくらくごくらく』

2018年3月15日

彼岸という言葉を聞いて、あなたは何を連想するだろうか。
お墓参り
ぼた餅
暑さ寒さも彼岸まで
などの答えが聞こえてくる。
しかし、彼岸=仏さまの世界
という答えは、現代ではほとんど聞かれなくなった。

「あー極楽・極楽」
皆さんは、どんな場面でこの言葉をつぶやくだろうか。
暖かいお風呂に入った時
夕食でおいしいビールを飲んだ時
充実した一日を終えて布団に潜り込んだ時
それぞれの場面が浮かんでくることでしょう。
仏教や宗教に自覚的に関わってこなかった方にとっても、この言葉は、案外耳慣れた言葉ではなかったろうか。
しかし、大切な方との別れに際し、いつの頃からか「極楽」という言葉よりも、
天国やあの世、お星さまという言葉が良く耳にされるようになった。
言葉の違いを自覚しているというよりも、テレビの影響ととらえるほうが適切だと思う。
(無意識にテレビをはじめとするマスコミの情報に振り回されている、私たちがいるのだ)

そんな時代にあって、この絵本は「極楽=仏さまの国」ということをはっきりと表現していて、
読んでいる私にも多くのことを示唆してくれる。

おじいちゃんとゆうた君は大の仲良しです。
おじいちゃんは、ゆうた君の子守り(=孫守りか)が上手です。
何気ない毎日の中で、たくさんの思い出を作っている2人です。
温泉行きの楽しい話も出ました。
でも、おじいちゃんの背中が痛くなったことで、温泉行きは中止になりました。

行けなくなったことにだだをこねても良かっただろうに、
ゆうた君は、一生懸命考えたのです。
大好きだったおじいちゃんのために、何が出来るだろうかと。
そこで、
温泉に行った気持ちになれるよう、温泉の元である入浴剤を買ってきてもらうように頼んだ。
温泉に行ったつもりで一緒にお風呂に入り、おじいちゃんの入浴を支えてあげた。
かわいいゆうた君の一生懸命な関わりが、いつも以上にうれしかったのでしょう。
だから、おじいちゃんのあの一言がこぼれたのです。
「ごくらく ごくらく」
ゆうた君にとっても、その言葉は、強く印象に残ったのです。
大好きなおじいちゃんは、仏さまの世界に行って幸せに暮らしているのだ。

「浄土真宗の僧侶なら、極楽ではなく、浄土でしょう!」というツッコミが入るかもしれない。
でも私は、浄土という世界観を受け止める前段階として、
これまで何気なく法話を聞き流してきた方々に「極楽?」「仏さまの国?」いう
引っかかりや問いが生まれてくださることがうれしいのである。
そしてそれは単なる死後の世界というものではなく、
「その仏さまの世界があることで、自らのいのちや人生を見つめ直したり、
悲しみや苦悩を抱えながらも再び歩み出すことが出来るのだ」と受け止めてほしいと思っている。

(記:源光寺住職 福間玄猷)

今日の絵本:
おじいちゃんのごくらくごくらく 西本鶏介/作 長谷川義史/絵 すずき出版
http://www.suzuki-syuppan.co.jp/script/detail.php?id=1040010680

投稿者について

福間 玄猷

1971年生まれ。本願寺派布教使・源光寺第14代住職 別名「絵本のお坊さん」 大阪府茨木市出身。平成8年三次市・源光寺へ入寺。《様々な経験を持った人々が集い、信頼できる温かなつながりを育む》そのような交流館を目指して、赤ちゃんからご年配の方まで世代を超えた活動を続けている。寺院や福祉施設はもちろん、各地の学校や保育所、コミュニティーセンター・いきいきサロンなどに招かれ、「いのち・こころ・真実を見つめる」ご法話や講演を重ねている。また、「子育て支援」「アドバンスケア・プランニング」「グリーフケア」を柱にした研修会も好評。子どもたちと富士山登山を3度完遂。グリーフケアアドバイザー1級/発達障害コミュニケーション初級指導者/つどい・さんあい 運営委員

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