娘と一緒に「シンドラーのリスト」を観る

2020年3月23日

 大学生の娘から、ときおり映画情報が入る。
「父さんは、絶対に見た方がいいよ」というコメント付きだ。
先日、留学準備のために実家に戻ってきた娘と、一緒に映画を見た。
その題名は、「シンドラーのリスト」
このような人間の歴史を直視できる娘の成長は、我が子ながら誇らしいものがある。
 
 第二次世界大戦における、ナチスドイツによるユダヤ大量虐殺を取り上げたものだ。
私自身、学生時代に「夜と霧」を読まされ、その歴史的惨状に大きな衝撃を受け、
その中で希望を失わずに生き抜いた心理学者・フランクルの姿に強く心を打たれた。
それ以来の大きな衝撃だった。
 
 当初ドイツ人実業家シンドラー(実はナチス党員)は、戦争を利用して金儲けに成功したのだが、
ある一人の女の子(=いわゆる赤い服を着た少女)を見てからは、
強制収容所行きとされていた人々を救い出すために様々な工作を施すのだった。
その工作においても様々な難問が襲い、多くの人々が命を落とすのだが、
最終的にリストアップした1.200人もの人々を救いだし、
今(=映画発表当時)でも6.000人の子孫が生き残っていると紹介していた。
シンドラーと従業員の別れの場面では、(これだけ多くの人々を救い出したにもかかわらず)
「あと一人でも多く助け出したかった」とシンドラーが泣き崩れた。私の心も、震えた。
そして、映画は、シンドラーが眠る墓地に、その子孫がお墓参りに集うシーンで終わっている。
シンドラーの墓石には、シンドラーへの感謝を込めて「一人の人間を救う者は世界を救う」と刻まれていた。

 人間は、そして日本は特に同調傾向が強いと言われている。
今回の新型コロナ騒動でも、ここしばらく、マスクがお店からなくなっている。
個人でも様々な情報を手に入れることの出来る現代であっても、一人ひとりが自分の頭で考えて行動するのは難しいもので、
「みんながやっていることをやることで、安心する」という習性がこびりついてしまっているようだ。
それは翻って「人と違うことをする人を批判する社会」になっているということ。
それは、シンドラーの時代も同じで、だからこそシンドラーが為した救出作戦は非常識な行動であったのだ。
きっと多くの批判を浴び、いのちの危険も感じていただろうと想像できる。
理想を持っていても、現実の壁にぶち当たるとすぐに引っ込めてしまう私にとって、シンドラーの生涯はまぶしすぎるほどである。
果たして私は、シンドラーのような強い意思を持てるだろうか。しばらく考え込んでしまった。
 
 娘もこの度の新型コロナ騒動で、4月には出発するはずだったドイツ留学が延期になった。
そのことは、留学終了後の就職活動に影響が出る事も意味している。
現代の世界や日本を変えたいという大きな夢を描いて大学に入り、その夢を形にするために留学の準備を進めていた。
父親である私には、大きすぎる夢である。大学卒業後の就職先も決めていたようだ。
その娘は、この映画を今どのような思いで見たのだろうか。
きっと、教科書にはない人生の応用問題を、映画を通して学んでいるのだろう。
まさに、世紀の大変革のまっただ中にいる私たち。後の教科書には、必ず紹介される歴史的事実になるだろう。
理不尽なことの多い世の中であるが、先人の苦悩や悲しみ、そして希望から、生きるヒントをたくさん受け取りたくましく歩んでほしいと願っている。

■ご紹介:『夜と霧』ドイツ強制収容所の体験記録
ヴィクトール・E・フランクル/著 霜山徳爾/訳
https://www.msz.co.jp/book/detail/00601.html

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  わかりやすくお話しします。

投稿者について

福間 玄猷

1971年生まれ。本願寺派布教使・源光寺第14代住職 別名「絵本のお坊さん」 大阪府茨木市出身。平成8年三次市・源光寺へ入寺。《様々な経験を持った人々が集い、信頼できる温かなつながりを育む》そのような交流館を目指して、赤ちゃんからご年配の方まで世代を超えた活動を続けている。寺院や福祉施設はもちろん、各地の学校や保育所、コミュニティーセンター・いきいきサロンなどに招かれ、「いのち・こころ・真実を見つめる」ご法話や講演を重ねている。また、「子育て支援」「アドバンスケア・プランニング」「グリーフケア」を柱にした研修会も好評。子どもたちと富士山登山を3度完遂。グリーフケアアドバイザー1級/発達障害コミュニケーション初級指導者/つどい・さんあい 運営委員

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