96才のおばあちゃまと ベッドサイトでしりとり

2020年6月12日

 新型コロナウイルスに関わる緊急事態宣言が解除され、学校はじめ企業でも手探りのなか日常が少しずつ戻りつつある。
嬉しい反面、これまでの外出自粛や学校一斉休校の影響が様々な分野で明らかになってきている。
お年寄りの方にとっても、これまで生活の一部として楽しんでおられたデイサービスやショートステイに行けなかったり、
行けたとしても中での生活環境が変わるなど、戸惑いを覚えた方は少なくないようだ。
生活環境の急変は、当然お年寄りの心身の状況や認知機能に影響を与えてしまう。
 
 先日の一人のご門徒さんからお電話が入った。
「家の仕事の都合で、おばあちゃん(ご門徒さんのお母さん)をしばらくショートステイに預かってもらっていました。
今回は、施設内の感染対策が徹底され、これまでのような大きなフロアでの皆さん一緒での食事はできず、
常に個室で過ごすことになっていたようです。話し好きのおばあちゃんが誰とも話が出来ず過ごしたものですから、
ショートステイから帰ってくるとそれまでのお元気な様子とは違い、一気に 認知症が進んだかのような言動に困惑してしまいました。
こんな変化は初めてで、家族として動揺しました。お医者さんにも相談し、薬も調整してもらいました。
源光寺さんのことはよく覚えていましたから、顔を見に来てやってもらえませんか。少し、しっかりするかもしれません」
 
 その当日、きれいにお世話の行き届いている寝室をのぞかせてもらった。
これまではベッドから起きて一緒にお仏間でお経を聞いてくださっていたおばあちゃまだったが、
「ここで聞かせてもらいます」と返事をなさった。
(やはり、人との接触が少なくなった分、気力も落ちて、体力も落ちていらっしゃるのだ。やはり、しんどいんだなあ)
少し悲しい気持ちを抱きながら、隣の仏間でおばあちゃんは聞こえるように、息子さんご夫妻と大きな声で「正信偈」お経をあげた。
「お経が聞こえていましたか?」おばあちゃまは、お経の本を少しめくっておられた様子で、
「聞こえましたよ。源光寺のご院家(=住職のこと)さんですね。うちは門徒ですから、よろしゅう頼みます」と何度も確認された。
私も、地域の昔話やおばあちゃまの若かりし頃の話を聞いてみた。よく思い出して、お話しくださった。
でも、時折「何もできなくなりました」ともつぶやかれる。お嫁さんがおっしゃったように、気持ちの変化が大きい。
大好きなイチゴケーキを食べ、少しお顔の表情も豊かになった。
「3人一緒に写真を撮りましょう」とスマホを向けると、無邪気な笑顔が返ってきた。息子さんは、「遺影にしましょう」と笑い飛ばす。
ひょんなきっかけで「しりとりはできますよ」とつぶやかれたので、その誘いにのった。
私自身、子どもが小さかった頃にドライブの車内でしりとりをしたことを思い出した。10年以上ぶりのしりとりだ。
おばあちゃまは、一度も答えに詰まることなく次から次へと答えた。まるで、孫のように楽しい時間は、正午を過ぎるまで15分以上続いた。

ご当家とは、これまで報恩講やご法事・月参りなど長年の仏縁をご一緒させていただいている。
しかも、他人という関係性が見事に楽しい時間を作り上げた。全くの他人ではなく、関係性のある他人であること。
 家庭での介護は、様々な複雑さがある。家族でしかできない部分と、家族だから出来ない部分がある。
家族は、お互いに甘え、わがままをぶつけあい、これまでのしがらみが根っこにあるからだ。
だから、家族内での孤立をまねかない工夫が必要だ。そこで大切なのは、専門業種の多様な関わりと関係性のある他人である。
家族を含めた三者が補完し合うことで、ご年配の方の人生を敬い、その家族を支援しながら、互いの日々を大切に重ねていけるようになる。
 
 しかし、このような楽しい思い出も、私が勝手に押しかけて叶うものではない。
息子さんであるご門徒さんから「顔を見に来てやってください。話を聞いてやってください」とお声かけを頂いたからこそできた、尊いご縁である。
このご縁とおばあちゃまとの楽しい思い出を、しっかり心に刻んでおきたい。また、お誘いのお電話があれば、おばあちゃまとのしりとりをしに駆けつけたい。

■新たな仏縁の創造を願ってご紹介
お坊さんが必ず答えてくれるお悩み相談サイト hasunoha(ハスノハ)https://hasunoha.jp/
絵本のお坊さんブログ http://genkouji.com/blog/
福間玄猷YouTubeサイト
https://www.youtube.com/channel/UCc73yUyaufMqtftsDFuoCoA?view_as=subscriber
お悩み相談にげんさんがお応えします ハスノハ(hasunoha)連携vol.1

仏教説話『だいじょうぶだよ へいきだよ』(青少年版 メッセージ動画つき)

築地本願寺(浄土真宗本願寺派)ホームページ https://tsukijihongwanji.jp/
浄土真宗本願寺派ホームページhttp://www.hongwanji.or.jp/
源光寺樹林葬型公園墓地「びおらの丘」 http://www.genkouji.com/viola.html
仏教書朗読『あなたがあなたになる48章』第3章 福間玄猷YouTubeチャンネル

源光寺ホームページ http://www.genkouji.com/

■絵本大好き住職が出来ること。
1.仏さまのお話(=ご法話の会) ご依頼の場所へ出向き、人生の確かなよりどころ
  として仏さまのお話しをします。
2.絵本の読み語り ご希望の場所に出向き、年齢にあわせた読み語りをします。
3.悩み事相談 人生・子育て・孫育て・人間関係・仏事などのご相談をお受けします。
4.お寺での楽しい行事をご紹介します。-門信徒会・仏教婦人会・お寺の子ども会
  などで、新たな出会いと学びが広がります。
5.お坊さんとのコラボをお受けできます。お坊さんとの化学反応を楽しみませんか。
6.お寺という宗教空間をお貸しできます。深い気づきや発見があるでしょう。
7.お寺でのボランティアをご紹介します。
8.お墓の相続に関するご相談もお受けします。(樹林葬型公園墓地びおらの丘)
9.仏教入門講座をおすすめします。仏教の教えや作法のイロハから、
  わかりやすくお話しします。

投稿者について

福間 玄猷

1971年生まれ。本願寺派布教使・源光寺第14代住職 別名「絵本のお坊さん」 大阪府茨木市出身。平成8年三次市・源光寺へ入寺。《様々な経験を持った人々が集い、信頼できる温かなつながりを育む》そのような交流館を目指して、赤ちゃんからご年配の方まで世代を超えた活動を続けている。寺院や福祉施設はもちろん、各地の学校や保育所、コミュニティーセンター・いきいきサロンなどに招かれ、「いのち・こころ・真実を見つめる」ご法話や講演を重ねている。また、「子育て支援」「アドバンスケア・プランニング」「グリーフケア」を柱にした研修会も好評。子どもたちと富士山登山を3度完遂。グリーフケアアドバイザー1級/発達障害コミュニケーション初級指導者/つどい・さんあい 運営委員

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