「小太郎」が私を変えてくれた

2022年1月19日

▼「私が絶対世話をするから」
と言った娘にせがまれて、父が愛護センターから1匹の子犬をもらってきてくれた。
娘は当時6年生。
両手に乗るほどの小ささだったため、名前は小太郎。
はじめは、かわいいばかり。
娘と一緒に、散歩が出来た。特にしつけをせずに、月日が過ぎた。

▼中学校に上がった娘
学業で忙しくなり、散歩をしなくなった。
あっという間に大きくなった小太郎。
体重もいつしか、20キロに迫るようになってきた。
力も強くなった小太郎の散歩に、私は困難を感じるようになってきた。
源光寺には、いつも来客がある。
「ワンワン」
玄関のベルが鳴る前に、小太郎が吠える。
お客さんが来られたことがわかるようになってきた。
「まあ、犬がいるんですね!」
「はい、最初は小さかったので小太郎と名づけましたが、いつの間にか大太郎になりました」
「これだけ大きいと散歩も大変ですね」
「そうなんです。最近では、私が散歩されているようです」
「きっと、足が太かったでしょう」
「あの頃は、気づいていなかったですね」
こんなに大きくなることがわかっていたら、小さいころからきちんとしつけをしていたのに」と悔やまれる。
父からは、「リードを短く持ったらいいよ」と教えてもらうが、私が散歩に連れて行くと、小太郎が飛びかかってきたり、くるくる回転したり、どんどん駆けだしてコントロールが出来なくなってきた。
引っ張られて私の方が転倒したり、急な方向転換で私がリードから手を離してしまうことも増えてきた。
次第に、小太郎を拒絶するようになり、原因不明の遠吠えを聞くだけでイライラがピークに達した。
そんな時は、大声で怒鳴りつけることもあった。
だから、一時期は父に散歩を行ってもらったこともあった。
「私は足が悪いのだから」と甘えていた。
犬さえもきちんとコントロール出来ない自分自身に、嫌気がさす。
どこか遠くに逃がしてしまおうと思ったり、再び愛護センターに送り返そうと考えたこともある。

▼友人のすすめで、犬のしつけを学ぶ
「犬は、飼い主家族をよく見ているのですよ。飼い主の気持ちは、ちゃんと伝わるのですよ」
それまでは心のどこかで「畜生」だと思っていたけれど、少し何かが変わり始めた。
そして、時は2020年。新型コロナウイルス感染症が拡がりはじめ、お寺の活動がこれまでのように出来なくなってきた。

真っ白になったカレンダーを見つめ、新型コロナの不安はもちろんだが、今後のお寺や僧侶のあり方、そして世界の激動についての不安が暴走した。
そんな折、インターネットを通じて、中島正明という一人の男性に出会った。
彼は、画面越しに語りかけた。
「このコロナという状況だからこそ、一人で多くの方々にまず呼吸の大切さを伝えたいのです」
彼とは一年半ほどの短い間だったが、その話題は、呼吸法からヨガ・瞑想へとつながっていく。
時に「仏教ではこれを中道といい・・・」と深まっていくので、切り口の違った彼の話に私は興味津々。
少しずつ、心の不安が和らいでいくのを感じ始める。
(小児麻痺を抱えてきた私は、これからはいよいよ身体が老いるばかり。その老いのスピードをいかに遅くしたらよいだろうか。いや、それは、単なる思い込みだったのではないだろうか?ひょっとすると、自分も変わることが出来るのかも知れない)
こんなささやかな問いは、やがて身体にも変化を与え始めた。
これまで草履の鼻緒をしっかりとはさむことが出来なかった左足の指に、少しずつ力が入るようになってきた。
左足で、しっかり地面を踏ん張ることが出来るようになってきた。
左足の緊張が少しずつほぐれてきて、可動域もひろがってきた。
同時に、ストレッチにも取り組むようになった。
身体の安定感が増してきた。
50歳になっても身体が良い方に変化することを体感して、私はとてもうれしかったのだ。

その頃から、父がいない時には小太郎の散歩を代わって行くようになった。
新型コロナがきっかけで、よく視聴するようになった犬の動画。
(皆さんは、こんなに犬をかわいがっているのだ!)
私は、これまで、なんと冷たい視線で小太郎を見ていたのだろうかと、ハッとした。
では、たまには小太郎を洗ってやろうと、動画で色々調べ始めた。
小太郎にシャンプーなんて、もう10年ぶりになるだろうか?
「素人のシャンプーはお勧めしない。犬も年を取ると、シャンプーは身体に負担を与えてしまう。手早くするためにも、ペットショップでお願いした方が良い」とのことだった。
そこで、毎年予防注射でお世話になっているペットショップに、小太郎を連れて行った。
半日ほど預かってもらったが、「慣れない小太郎が暴れてしまいましたから、身体の拭き取りはしましたが、シャンプーは出来ませんでした」と報告を受ける。
「私は何もしていないけれど、小太郎にとっては、うちが居心地が良かったんだ」
帰り道の私は、申し訳ない思いになった。

▼小太郎に対する気持ちと自分自身の変化
それまで、手だけでリードを引いていた私。
いつつまづいて転んでしまわないか、ドキドキの散歩。
それこそ、いのちがけだった。
家族からも「転ばないでね」「気をつけてね」といつも声をかけられるほどだった。
実際に、何度も転んで怪我もした私。
ところが、ここ最近、ドキドキが少なくなってきたのだ。
小太郎へのコントロールも出来やすくなってきた。
ある日、気づいた。
身体を上手に使ってしっかり後ろに重心をかけながら、落ち着いて散歩に行けるようになっていたのだった。
すると、長年抱いてきた、小太郎への嫌悪感も和らいできた。
再び、愛おしさを感じるようになってきた。

小太郎との関わりを振り返ってみよう。
「どうせ、私は小児麻痺だから・・・」という長年の思い込みが、自分の思考や身体を縛りつけていた。それは、小太郎だけでなく、身の回りの人々への捉え方さえ偏ったものになっていた。
そのことを、この年になってようやく実感している。
この先、「福間玄猷」というこれまでの枠組みがどのように変化してゆくのか、我ながら楽しみでもある。

50歳の誕生日を5ヶ月も過ぎた今、「小太郎」との関わりは、幼いころからお寺の法話会で聞き続けてきた言葉を、より強く印象づけるものとなった。
「人間は、自分中心に物事を捉える癖があるのです。言い換えると、人間は、物事をあるがままに見てはいない(=邪見)ということです。その癖があることにさえ気づいていないので、問題の根っこは深いのです。仏さまとは、物事をありのままに観る(=正見)ことが出来る人のことをいうのです」

■新たな仏縁の創造を願ってご紹介
お坊さんが必ず答えてくれるお悩み相談サイト hasunoha(ハスノハ)https://hasunoha.jp/
絵本のお坊さんブログ http://genkouji.com/blog/
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「2021年源光寺トーク&ライブ ハーモニカ共演」

『新々みちしるべ 菩薩シリーズ』理知-普賢菩薩
偽り むだ口 悪口 二枚舌を使わず https://www.youtube.com/watch?v=ferhaRGkUno
2021三好春樹さん公開講演会-後半 https://www.youtube.com/watch?v=1EfSKRhaGNw
浄土真宗本願寺派ホームページhttp://www.hongwanji.or.jp/
築地本願寺(浄土真宗本願寺派)ホームページ https://tsukijihongwanji.jp/
源光寺ホームページ http://www.genkouji.com/
【はじめての浄土真宗】「正信念仏偈」現代語訳を聞くhttps://www.youtube.com/watch?v=XHidnswZxQM
樹林葬型公園墓地「びおらの丘」 http://www.genkouji.com/viola.html

■絵本大好き住職が出来ること。
1.仏さまのお話(=ご法話の会) ご依頼の場所へ出向き、人生の確かなよりどころ
として仏さまのお話しをします。
2.絵本の読み語り ご希望の場所に出向き、年齢にあわせた読み語りをします。
3.悩み事相談 人生・子育て・孫育て・人間関係・仏事などのご相談をお受けします。
4.お寺での楽しい行事をご紹介します。-門信徒会・仏教婦人会・お寺の子ども会
などで、新たな出会いと学びが広がります。
5.お坊さんとのコラボをお受けできます。お坊さんとの化学反応を楽しみませんか。
6.お寺という宗教空間をお貸しできます。深い気づきや発見があるでしょう。
7.お寺でのボランティアをご紹介します。
8.お墓の相続に関するご相談もお受けします。(樹木葬型公園墓地びおらの丘)
9.仏教入門講座をおすすめします。仏教の教えや作法のイロハから、
わかりやすくお話しします。

投稿者について

福間 玄猷

1971年生まれ。本願寺派布教使・源光寺第14代住職 別名「絵本のお坊さん」 大阪府茨木市出身。平成8年三次市・源光寺へ入寺。《様々な経験を持った人々が集い、信頼できる温かなつながりを育む》そのような交流館を目指して、赤ちゃんからご年配の方まで世代を超えた活動を続けている。寺院や福祉施設はもちろん、各地の学校や保育所、コミュニティーセンター・いきいきサロンなどに招かれ、「いのち・こころ・真実を見つめる」ご法話や講演を重ねている。また、「子育て支援」「アドバンスケア・プランニング」「グリーフケア」を柱にした研修会も好評。子どもたちと富士山登山を3度完遂。グリーフケアアドバイザー1級/発達障害コミュニケーション初級指導者/つどい・さんあい 運営委員

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