「真面目」や「一生懸命」は 時に人を傷つける

2020年1月17日

お寺で電話や来訪で「悩み事相談」をお受けする私は、
スキルアップと相談内容のふりかえりのために、スーパバイズを受けている。
その先生とのやりとりの中で、主訴である「悩み事相談」のふりかえりにとどまらず、
自分の生い立ちや抱えていた課題へと話題が広がっていくことがある。

「世界の紛争がなぜ止まないのか」
という私の長年の憤りをぶつけた時、先生は、
「争いは自分の正しさを相手に押し付けることから起きます」
とおっしゃった。さらにやりとりが続く中で、「自分の正しさ」という言葉が、
自分自身のこれまでの生き方や僧侶としての方向性を大きく問い直すきっかけとなった。
 
私は、脳性小児麻痺を抱えて生まれてきた。特に左半身に麻痺がある私を抱えて、
両親とりわけ母親の苦悩は、私の想像をはるかに超えたものだった。
障害者へ対する理解や支援も広がっていなかったあの時代。
母親は「あなたは人の何倍も努力しなければダメなのよ」
「あなたは真面目だけが取り柄なのよ」「社会で独り立ちができるように」
と言い続けた。兄に関わるよりもはるかに多くの時間を割いて、
あちこちの診療やリハビリにも連れて行ってくれ、
他の家庭の何倍も厳しく育てた。
その母のおかげと教え込まれた「真面目」「一生懸命」な努力で、
私は何とか(勉強とスポーツ以外は)人並みに生活できるようになった。

その成功体験は、三次に来てから「早く皆さんに認めてもらわなければ」という気負いや
「立派な子どもに育てなければ」という責任感、
最近は「過疎の中でもしっかりお寺を相続しなければ」という危機感が重なり、
ますます「真面目」に「一生懸命」になっていた。
そうだ。
「真面目」や「一生懸命」とは、だれからもほめられるものだと思っていた。
 
しかし、最近その考え方に少しずつ疑問がわいてきた。
実際、自分自身の心の内を丁寧にふりかえってみると、
「真面目」「一生懸命」に見えない人を心の中でさげすんだり、
優越感を抱いたりしていた。
そして、「真面目」「一生懸命」を続けていくうちに心身に余裕がなくなり、
「自分はがんばっているのに」と人を責めるようになってくる。
その人の条件が調っていないにもかかわらず、「これは大切なことですから、がんばりましょう」
と理屈で責め立てる場面も思い出されたのだった。
 「世界の紛争がなぜ止まないのか」と問いながら、
同じように自分の正しさを押しつけて、
(見えない)争いを自分が生み出してしまっていたことに「ハッ」としたのだ。

 私から「真面目」「一生懸命」を無くしたら、何も残らないのではないかという恐怖感がある。
まして、40数年やってきたことを急に方向転換できるほど、器用な人間ではない。
しかし、そろそろ脱皮する時期に来ているようだ。

 スーパーバイザーの先生は、3日間のお寺さまでのご法話の合間に「楽しんで!!」
とメッセージを送ってくださった。「楽しんで!!」の意味はまだまだ消化できないが、
次第に肩の力が抜けて自然体でご法話をしている自分も垣間見れた。
(でも、その善し悪しや評価を気にしてしまう自分もいるわけだが)
改めて、「大切なものが伝わる・大切なものを伝える」ことの意味を考えさせられているこの頃である。

■絵本のお坊さん問い合わせ先 
 名前:福間玄猷(ふくまげんゆう)
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投稿者について

福間 玄猷

1971年生まれ。本願寺派布教使・源光寺第14代住職 別名「絵本のお坊さん」 大阪府茨木市出身。平成8年三次市・源光寺へ入寺。《様々な経験を持った人々が集い、信頼できる温かなつながりを育む》そのような交流館を目指して、赤ちゃんからご年配の方まで世代を超えた活動を続けている。寺院や福祉施設はもちろん、各地の学校や保育所、コミュニティーセンター・いきいきサロンなどに招かれ、「いのち・こころ・真実を見つめる」ご法話や講演を重ねている。また、「子育て支援」「アドバンスケア・プランニング」「グリーフケア」を柱にした研修会も好評。子どもたちと富士山登山を3度完遂。グリーフケアアドバイザー1級/発達障害コミュニケーション初級指導者/つどい・さんあい 運営委員

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