悲しみの中から生み出される 大切なもの

2020年2月12日

 平成7年阪神・淡路大震災。私は、大阪・茨木市で遭遇した。お寺の本堂で寝ていた私たち家族。
大きな揺れがとてつもなく怖かった。仏具が落ちた大きな音に驚き、思わず大声を出して布団にくるまった。
平成8年に広島・三次市の源光寺に入寺した。あの時、離れたこの三次市でも揺れたと聞いた。
私は、今でも揺れに敏感だ。屋根から雪が落ちる雪ずりの音を聞いて、「また、地震か」と身体が固まったことも度々だ。

その後、北海道奥尻島地震と津波・新潟中越地震・福岡西方沖地震・東日本大震災と津波・そして原発事故。
さらに熊本地震。私たちは、これでもかと続く自然災害を見聞きし、時に直接遭遇してしまう。
また、自然災害だけではなく、人間同士が引き起こす事故・事件・戦乱からも様々な影響を受けて、日々を生きている。

1月17日を2日過ぎた日、ある小学校での6年生読み聞かせの一コマ。
こんな質問から、その20分は始まった。

1.「皆さんが見聞きする出来事の中で、「こわい」と思うことは何ですか」
皆の前での発表には抵抗があると思われたので、「まず自分で書き出して」と声をかけた。
読み聞かせ終了後、書き出したものを預かり目を通してみた。
こわいものはない、と答えた子どもがいる一方で、自分が抱えるけがや将来の一人暮らし、
また、親を含めた大人におこられることを怖いと思う子どもや、死んでしまうことについて怖いと思う子どももいた。
これらの声は、子ども自身の個人の問題という限定されたものではなく、
家庭・地域・社会と密接に関わり合ったものだと感じた。ほかにも、地震・殺人・不審者・事件・事故をこわいと思う子どもがいた。
また、現代を反映して、外国からのミサイルや戦争という声も上がった。
意識するしないにかかわらず、世界の様子が子どもたちの耳にも入り、その心に影響を与えているのだ。

2.「こわいという気持ちを受け止めるとっておきのヒントがあります」
と投げかけます。
「それは、こわい体験をして、その出来事を受け止めた人の話を聞くことです」

そこで、絵本の導入。

「今日の読み聞かせの絵本は、『ハナミズキのみち』
2011年3月11日の東日本大震災を取り上げた絵本です。
 作者である淺沼さんは、あの大きな揺れの後、一旦は息子さんを確認できましたが、
その後それぞれの役目を果たすためにばらばらになってしまい、2週間後、遺体となった息子さんと対面することとなったそうです」

直接体験していない地震だが、子どもたちは、絵と言葉に支えられてそれぞれが想像力を膨らませ、身も心もすいよせられていく。
教室は、静まりかえっている。

読み聞かせ後、子どもたちの心をほぐします。
「6年生という多感な時期。そして学びを重ねる中で世の中のことも少しずつわかり始めてきたからこそ、
不安やこわさを感じることも多くなってきたでしょう。
ただ、不安やこわさは、自分の中だけで抱えてしまうと前に踏み出していくことが難しくなっていきます。
そんな時は、こわいと思う気持ちを言葉にすること。そして、それを分かち合える仲間がいることが、とても大切です。
さらに、実際にこわい体験をし、それを受け止めた人の話を聞いておくことで、自分の人生のいざというときのヒントになります。
不安や心配が多い時代だけれど、地域や世の中をよくしていこうとがんばっている人たちは、必ずいます。
決してひとりぼっちではないことをどうか覚えていてください」
と締めくくった。

「1ヶ月の間、自由に読んでみてください」と、震災関連の絵本や書籍、阪神淡路大震災の新聞縮小版を預けて教室を後にした。

■今日の絵本:『ハナミズキのみち』淺沼 ミキ子/著 黒井 健 /絵 金の星社/発行
https://www.kinnohoshi.co.jp/search/info.php?isbn=9784323072586
(2018.3.8ブログ投稿分再掲)

■絵本のお坊さん問い合わせ先 
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投稿者について

福間 玄猷

1971年生まれ。本願寺派布教使・源光寺第14代住職 別名「絵本のお坊さん」 大阪府茨木市出身。平成8年三次市・源光寺へ入寺。《様々な経験を持った人々が集い、信頼できる温かなつながりを育む》そのような交流館を目指して、赤ちゃんからご年配の方まで世代を超えた活動を続けている。寺院や福祉施設はもちろん、各地の学校や保育所、コミュニティーセンター・いきいきサロンなどに招かれ、「いのち・こころ・真実を見つめる」ご法話や講演を重ねている。また、「子育て支援」「アドバンスケア・プランニング」「グリーフケア」を柱にした研修会も好評。子どもたちと富士山登山を3度完遂。グリーフケアアドバイザー1級/発達障害コミュニケーション初級指導者/つどい・さんあい 運営委員

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