「その時」に初めて心に響く言葉 『御堂さん』のその後

2022年7月4日

ご門徒さんの月参りに寄せていただきました。ご夫婦とも、門信徒会・仏教婦人会の役員を引き受けてくださっていますので、正信偈のお勤めの後は、いつも一緒にお茶をいただきながら近況報告やご相談をさせていただきます。
今回は、ご主人が『御堂さん』を取り出してお話しくださいました。

「ここのところ働き過ぎで身体を痛めましたので、数日家で休んでいました。外仕事が出来ませんから、『御堂さん』でもと思って読んでいました。今までもさらっと読んではいましたが、こんなにじっくり読んだのは久しぶりでした。読んでみると、大切なことが書いてありました。
特にこの部分でした。
「お父さんは、末期がんを患い胃の全摘手術を受けたが、その後再発。望みをかけて抗がん剤治療に取り組むも、進行が早く、先生から治療の中止を提案されたそうです。お医者さんからの提案を、息子としてどのように父に伝えたらよいのか思案されておられたそうです。
「父さん、お浄土へ参る準備をしてください」
その言葉に、
「息子よ、お浄土に参らせていただくには、私の準備も覚悟も何一つ必要ないぞ。すべてはおまかせひとつじゃ」と口を開き、お念仏を称えられたそうです。

私(=ご主人)は、いざという時、このように息子と言葉を交わすことが出来るでしょうか?」
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私にとっては、『御堂さん』を配るのは毎月のことです。ですから、配り終わったら「今月も大仕事が終わった」と安堵していました。でも実は、その後にいろんなドラマがあるのですね。一人ひとりのご門徒さんが、いろんなタイミングで手に取り、読んで(友だちに回覧して)、しばらく忘れられて、でも思いだしてまた手に取ってくださっているのでした。以前は気にも留めなかった言葉が、「その時」に初めて心に届くということがあるんですね。

考えてみれば、お寺のあらゆる活動は、すぐに結果が明らかになるものではありません。「その時」のための先行投資といってもいいのかも知れませんね。だから、とても面白いですね。ただのマンネリはいけませんが、世間とは違う時間の流れを大切にしながら、結果を焦らず気長に取り組むことも大切だと思いました。

投稿者について

福間 玄猷

1971年生まれ。本願寺派布教使・源光寺第14代住職 別名「絵本のお坊さん」 大阪府茨木市出身。平成8年三次市・源光寺へ入寺。《様々な経験を持った人々が集い、信頼できる温かなつながりを育む》そのような交流館を目指して、赤ちゃんからご年配の方まで世代を超えた活動を続けている。寺院や福祉施設はもちろん、各地の学校や保育所、コミュニティーセンター・いきいきサロンなどに招かれ、「いのち・こころ・真実を見つめる」ご法話や講演を重ねている。また、「子育て支援」「アドバンスケア・プランニング」「グリーフケア」を柱にした研修会も好評。子どもたちと富士山登山を3度完遂。グリーフケアアドバイザー1級/発達障害コミュニケーション初級指導者/つどい・さんあい 運営委員

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