娘さんに伝承された渋皮煮 在家報恩講参り始まる

2022年10月11日

源光寺では、先週から在家報恩講参りが始まりました。
報恩講とは、浄土真宗の門信徒が各地でお勤めする開祖・親鸞聖人を偲ぶご法事です。寺院でお勤めするものとは別に、私たち僧侶が各ご門徒宅へ参らせて頂き、ご家族と一緒にお勤めするのが在家報恩講です。
ご当家にお葬式やご法事がなくても、こうして年に一度はご家族とお目にかかることが出来ますから、お互いに親近感がわき、仏縁を深める意味でも大変素晴らしい習慣だと思っています。

先日のお宅では、お参りが終わった後にお茶を出してくださり、
「一緒に召し上がってみてください!」
とアルミホイルに包んだものを出してくださいました。
「栗の渋皮煮です。亡くなった母の味を思い出しながら作ってみましたが、どうも難しいです」

そうなんです。お母さまは、在家報恩講に参った私にいつも手作りの渋皮煮を出してくださっていたのでした。お参りが済んだあと熱いお茶と一緒にいただきながら、お寺のことや互いの家族のことなどをお話しするのが定番になっていました。
お母さまが亡くなられた後、新型コロナが拡がりました。ですから、そのお宅でお茶の接待をお受けするのは、久しぶりでした。
「渋皮をむくのが手間かかりました。母がしていたように冷凍で保存していましたが、味の方はいかがですか?」
アルミ箔を剥きながら、「玄猷さん玄猷さん!」といつも気さくに声をかけてくださっていたお母さまとのやりとりを思い出していました。
解凍から間がなかったのか、少し冷たい渋皮煮でした。
でも、
「こうして、いろんなことが時間をかけながら受け継がれていくのだ」

と実感出来ましたので、気持ちはとてもほっこりとしていました。今年は、お寺の栗の木が枯れて、母の手作りの渋皮煮は食べられなくなりましたので、その分しっかり味わわせて頂きました。

投稿者について

福間 玄猷

1971年生まれ。本願寺派布教使・源光寺第14代住職 別名「絵本のお坊さん」 大阪府茨木市出身。平成8年三次市・源光寺へ入寺。《様々な経験を持った人々が集い、信頼できる温かなつながりを育む》そのような交流館を目指して、赤ちゃんからご年配の方まで世代を超えた活動を続けている。寺院や福祉施設はもちろん、各地の学校や保育所、コミュニティーセンター・いきいきサロンなどに招かれ、「いのち・こころ・真実を見つめる」ご法話や講演を重ねている。また、「子育て支援」「アドバンスケア・プランニング」「グリーフケア」を柱にした研修会も好評。子どもたちと富士山登山を3度完遂。グリーフケアアドバイザー1級/発達障害コミュニケーション初級指導者/つどい・さんあい 運営委員

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