縁ある方のまごころが心に滲みる 御堂さん配布

2023年7月12日

6月中旬、実父の入院の連絡を受けるも、すぐには駆けつけることが出来ませんでした。地域のお寺さまと合同で開催する行事や土日にかけて数件のご門徒さんのご法事、源光寺が主催する講演会などが入っていたりしたからです。
「これらを無事に済ませたら、お見舞いに駆けつけよう」

日曜日までの予定を全て済ませて、綾部市内の住まいに向かいました。夜遅くに到着し、母に様子を聞きました。翌朝すぐにでも実父の顔を見に行きたかったのですが、この病院ではコロナ対応のために面会制限があり、2日後に面会をすることになりました。面会に行くと父とも話が出来まして、少し容体も落ち着いているようでした。さらに、その次の日には主治医との面談もかない「リハビリの様子次第ですが、週明けには退院の可能性もあります」とのことでした。退院後の生活の不安も少しはありましたが、ホッとしたのがその時の正直な気持ちでした。

そこで、私は三次に帰り、ここ数日でたまっていた仕事に取りかかりました。『御堂さん』7月号配布もその一つでした。青々と伸びる稲やお寺さまの掲示板など、バイクに乗りながら目にする何気ない風景が、三次-綾部を往復して張り詰めていた私の心に潤いを与えてくれました。数年前まで地区役員をしてくださっていたこの方は「暑い中大変じゃろ、これ飲んでいきなさい」と栄養ドリンクを渡してくださいました。これまでも何度か同じやりとりを重ねてきましたが、この度はそのお言葉ややりとりが特に心に滲みました。本当にうれしかったです。おかげで、予定通り配り終わることが出来ました。

しかし、その3日後、実父の急逝の知らせが入ったのでした。「まさか!」と本当に思ってしまいました。「え~、退院できるんじゃなかったのか?」

今まで、多くのご門徒さんのお通夜・お葬儀に立ち会ってきました。「朝には紅顔ありて 夕べには白骨となれる身なり」と蓮如さまの御文章を何度も拝読してきました。そして、七日参りや満中陰、その後のご法事など。手前味噌ではありますが、丁寧に仏縁を重ねてきたつもりでした。

しかし、今回初めて実父の急逝を経験することとなり、「ご遺族となられたご門徒さんのことが、まだまだわかっていなかった」と気づかされました。それは、短期間のうちに入院から葬送に到ったことによる患者家族その後、遺族となってしまい激しくゆれ動く自分の気持ちの変化、家族や親族間での気持ちの交錯、縁ある方から何気なくかけられる言葉によってホッとしたり、反対に悲しい気持ちが強くなったり。本当は聞いて欲しいけれど、上手く言葉に出来ないことなどなど。こちらから一々お話しすることではありませんが、これだけめまぐるしく心身の様々な変化を経験することになるとは。「グリーフケア」の研修で何度も聞いてきただけでなく、時には皆さまにもお話をしてきました。しかし、実際はこんなにも大きな揺さぶりを経験することになるのかと驚きました。

この度の経験は、自分自身の日々の重ね方、さらには、ご門徒さんとの関わり方に何らかの変化を生んでいくでしょう。実父が聞き続けた阿弥陀如来の願いに、今まで以上に耳を傾けます。ご門徒さんの、言葉にならないものもできるだけ丁寧にくみとれるようにします。実父の急逝を単なる悲しみで終わらせず、新たな仏縁と頂きながら自らを磨いていきます。

投稿再開以来、ご縁のある方々から実父を偲ぶとともにお悔やみの言葉を、数多く拝受しております。遺族の一人として本当に心強く思っています。この場を借りて、重ねてお礼を申しあげます。合掌

投稿者について

福間 玄猷

1971年生まれ。本願寺派布教使・源光寺第14代住職 別名「絵本のお坊さん」 大阪府茨木市出身。平成8年三次市・源光寺へ入寺。《様々な経験を持った人々が集い、信頼できる温かなつながりを育む》そのような交流館を目指して、赤ちゃんからご年配の方まで世代を超えた活動を続けている。寺院や福祉施設はもちろん、各地の学校や保育所、コミュニティーセンター・いきいきサロンなどに招かれ、「いのち・こころ・真実を見つめる」ご法話や講演を重ねている。また、「子育て支援」「アドバンスケア・プランニング」「グリーフケア」を柱にした研修会も好評。子どもたちと富士山登山を3度完遂。グリーフケアアドバイザー1級/発達障害コミュニケーション初級指導者/つどい・さんあい 運営委員

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA