■悲
『御堂さん』をバイクで配っている時、地域の方とバッタリ出会った。
ご門徒のAさん「お寺の護持会の地区役員会を辞めたい。今まで長い間続けてきたけれど、もう出来ない。年会費は、振り込みで直接払いたい。もし、役員を辞められないのなら、源光寺の門徒も辞めたい」
私「そうなんですね。お話を聞かせていただきました。私一人では判断できませんから、護持会会長にも相談させていただきます」
別れ際に『御堂さん』を手渡す。
地域の中で、Aさんを含め2軒のご門徒さんが2年交代で役員を受け持ってくださっていた。もう、30年以上にもなる。その間に年齢を重ね、ご本人や家族の体調なども変わっていく。だから、役員辞退もやむを得ないと思う。ただ同時に、地域での役員のなり手がいなくなると会の運営が難しくなる。今回のAさんの申し出がきっかけで他の地域での役員辞退や会員の退会へ拡がっていくと、自主的に活動してきた護持会や仏教婦人会の運営に大きな影響を与えることになる。これは、少子・高齢・過疎地域の大きな課題の一つであり、「住職ががんばってなんとかなる」性質の問題ではないので、大変頭が痛いことである。
■喜
悲しいやりとりを頭の中で反芻しながら、『御堂さん』を配り続け、いよいよ最後の数件目、家から出て来たご門徒の孫・F君(中学生)にバッタリ出会った。
F君「あ、玄猷さん!」
私「こんにちは、元気ですか?」
F君「ハイ、元気です」
私「大きなおばあちゃんも、元気ですか?」
F君「ハイ、元気です」
私「それは、よかった。これは毎月の御堂さんです。皆さんで読んでください」
F君「有り難うございます」
私「じゃあ、また会いましょう!」
F君「バイバイ」
私「じゃあね」
F君「お達者で!」
私「有り難う!」
F君「僕もがんばりま~す」
私「プップッ~」(バイクのクラクション)
「お達者で!」と私の身を案じてくれたことへの感動とともに、自分自身のがんばりもさらりと意思表示出来るところがかっこよかった。
およそ3時間の間に、まさに悲喜交々を経験した私だった。